中央支部・国際部 タパ 彩那
はじめに
私は、2023年に中小企業診断士登録をし、国際部に入部いたしました。2024年には行政書士登録をし、国際業務と呼ばれる、外国人のビザ申請を中心に行政書士業務を行っています。その経験を活かし、中小企業における外国人雇用時の留意点等について、在留資格の観点で記載させていただきます。
在日外国人の在留資格については、「出入国管理及び難民認定法(通称:入管法)」で定められていますが、この入管法に違反すると罰則があります。外国人本人だけではなく、企業も「不法就労助長罪」に問われる可能性がありますので、ぜひ外国人の在留資格について、頭の片隅に置いていただければと思います。
在日外国人の在留資格について
2024年末時点の在日外国人の数は、コロナ前の約293万人を大きく超え、約377万人となっています。日本に在住している全ての外国人(中長期在留者)は在留カードを保有し、それぞれ何かしらの在留資格を持ち、日本で暮らしています。
在留資格には大きく2種類あり、1つは身分系の資格、もう1つは就労系の資格です。
身分系の資格の例は、日本人の配偶者、永住者、定住者(難民等)、永住者の配偶者等です。身分系の資格の特徴は、日本人と同じように、基本的に就労制限がないという点です。
就労系の資格の例は、技術・人文知識・国際業務、特定技能、技能、経営管理等があります。就労系の資格の特徴は、在留資格の種類によって、就労できる職種や業務が限定される点です。
上記2分類に含まれない在留資格として、留学や家族滞在があります。留学や家族滞在の在留資格は、基本的には就労することができませんが、アルバイトで雇用している企業も多いので、その場合の留意点についても後ほど記載いたします。
在日外国人の主な就労系在留資格について
在日外国人の主な就労資格は、「技術・人文知識・国際業務」、「特定技能」、「技能実習(※)」等です。
(※)技能実習は就労ができる資格ではありますが、他の就労系の資格とは性質が異なります。
「技術・人文知識・国際業務(通称:ぎじんこく)」ビザの特徴は、企業側は日本人を雇用するのと同じようにこの在留資格を持っている外国人を雇用することができる点です。特定技能や技能実習には在留期間の上限がありますが、この「ぎじんこく」ビザは、在留期間の上限がなく、期間の更新(延長)をすることができます。ただし、このビザを持っている外国人は、大学や専門学校で学んだ知識や、過去の業務の実務経験を活かせる業務にしか就くことができないので、注意が必要です。また、飲食店のキッチンやホールなどアルバイトでもできるような業務(単純作業)を行うこともできません。
次に、「特定技能」ビザの特徴ですが、このビザは特定技能制度で在住する外国人に認められる在留資格です。特定技能制度とは、日本で人手不足が深刻な分野で外国人労働者を受け入れる制度で、特定の業種・職種に限定されています。対象職種は、出入国在留管理庁のHP等で最新の情報をご確認ください。
特定技能には、1号と2号があり、最初は1号から始まり、
1号に求められるのは、即戦力としての「相当程度の知識と経験」であるのに対して、2号に求められるのは、「熟練した技術」になります。2号に移行する際の試験は、難易度は高いです。1号での在留期間には通算5年という上限があり延長することができませんが、2号には上限がありません。
また、特定技能制度で外国人を雇用する場合は、法令に定める諸々の事項に対応する必要があり、企業単体では対応が難しいため、外国人の面倒を見てくれる「登録支援機関」を活用するのが一般的です。登録支援機関に対して、企業は月ごとに費用の支払いが発生します。
最後に、「技能実習」ビザですが、特定技能と名前は似ていますが、技能実習と特定技能は制度の目的が全く異なります。特定技能が人手不足を補うための制度であるのに対して、技能実習制度は、「技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的」としています。つまり、技能実習は、日本の国際貢献の一環です。技能実習生を、人手不足を補うために活用することはできません。
技能実習制度では、多くの企業は「監理団体」という組織を通して、技能実習生を受け入れることになります。企業が技能実習生を受け入れる場合、監理団体に月ごとに監理費を支払う必要があります。技能実習は、1号、2号、3号まであり、1号は1年、2号は2年、3号は2年が上限となっており、通算で最長5年となります。技能実習2号を終えた後、対象の職種については、特定技能に移行することも可能です。今後、この技能実習制度については、日本の国際貢献という目的を見直し、人手不足分野における人材の育成・確保を目的とした「育成就労制度」に変わることが予定されております。
中小企業で外国人を雇用する場合の留意点
まずは、在留カードをしっかり確認しましょう! 不法就労助長罪に問われると、外国人本人だけではなく、雇用している企業も3年以下の懲役、もしくは300万円以下の罰金が課される可能性があります。 外国人を雇用する前に、必ず在留カードを確認し、就労できる在留資格なのか、就労の制限はないのか、 「技術・人文知識・国際業務」ビザの場合、大学や専門学校で専攻したことを業務で活かせるのか等をしっかり確認しましょう。在留カードの確認方法は、厚労省のHP等にも掲載されています。
次に、アルバイトを雇用する際、在日外国人の在留資格が「留学」や「家族滞在」の場合は、勤務時間に注意が必要です。 留学生や家族滞在ビザで日本に在住している方は、基本的には、就労不可になります。 ただし、資格外活動許可を得ている方は、週28時間まで就労することが可能です。企業側がこのルールを知らずに、週28時間以上働かせてしまった場合や、知っていてルールを破った場合も不法就労助長罪に問われる可能性があるので、注意してください。特に、複数のアルバイトを掛け持ちしている場合、週の勤務時間を企業が把握できていないこともあるので、要注意です。
まとめ
中小企業の人手不足を補うためにも、外国人の雇用を検討している企業も多いかと思いますが、在留資格ごとの特徴や雇用する場合の留意点を事前にご確認いただければ幸いです。
■タパ 彩那(たぱ あやな)
2023年中小企業診断士登録、2024年行政書士登録(行政書士事務所Hallelujah、申請取次行政書士)。東京都文京区出身。2016年にネパール人の夫と国際結婚、4歳、3歳の二児の母。
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