Global Wind (グローバル・ウインド)
ブラジルのコーヒー農園を訪問

中央支部 岩田 泰史

はじめに
 今年の3月下旬にブラジルへ出張してきました。出張の主な目的は2つあり、ひとつはコーヒーを研究している大学の教授と面談して情報収集すること、もうひとつはコーヒー農園を見学することです。今回は農園を見学した様子をお伝えします。
コーヒー生産国としてのブラジル
 今年はブラジルでワールドカップが開催されており、世界中からの注目度が高い国のひとつです。そして、コーヒーで有名なのはご存じの方が多いと思いますが、ブラジルは生産量が世界1位で、世界中の生産量の約1/3を占めています。消費量も世界2位で、ブラジルを抜きにコーヒーを語ることはできないコーヒー大国です。ちなみに、日本は消費国としては4位で、ブラジルからの輸入量が一番多く、大変お世話になっている国です。
 ブラジルでは品質の良い豆は輸出用にまわり、2級、3級品が国内消費にまわっているため、ブラジル人より日本人の方がおいしいコーヒーを飲んでいるようです。聞いた話では、日本人のお茶のような感覚だそうで、日本では飲食店でお茶が無料で出てくるのと同じように、ブラジル国内では無料でコーヒーを飲めるところが多いです。もちろん、有料で品質の良いコーヒーも扱われています。
 また、ブラジルは国内市場保護のため、コーヒーには非常に高い輸入関税が課されており、ブラジル国内で他国産のコーヒーを飲める機会は少ないようです。大学教授にブラジル国外のコーヒー豆をおみやげとして渡したところ、大変喜ばれました。
ブラジルのコーヒー農園
 ブラジル全土でコーヒーが生産されているのではなく、栽培には適した条件があり、限られた地域でしか生産されていません。今回はミナスジェライス州の「セラード」と「スルデミナス」という地域に行ってきました。
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             コーヒーの生産地
 農園といっても規模は様々で、家族的な経営をしている小農家から100ヘクタールを超えるような大農園、その中間である中規模の農園に分類されます。農園数はセラード地域だけで、大小含めて5,000くらいはあるとのことでした。大農園と比べると小さい農園は設備などで不利な面がありますが、生き残るために品質のよいコーヒーを作るために努力している小農園は多くあります。小農園よりも中途半端な中規模農園の方が倒産する率は意外に高いようで、品質かコストのどちらにも強みが無いと淘汰されるのはコーヒー農園でも同じようです。
 また、今年はコーヒーの実が大きくなる1、2月に数十年ぶりの干ばつに見舞われたため、どれだけの減産になるのか、見通しが立たずに不安な声が聞かれました。実際に収穫期を迎えた現在、心配されていたほどの不作ではなかったのですが、相場は高騰したため、世界中のコーヒー業界に大きな影響を与えています。
農園見学
 見学した大農園では車で移動しなければ周りきれないほどコーヒーの木が広がっており、その広大さに圧倒されました。コーヒーの木は高いものは3メートルくらいにもなりますので、林の中にいるような錯覚を覚えます。農園内ではコーヒー以外にも不作によるリスクヘッジのために、とうもろこしや大豆が生産されていました。
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                     広大なコーヒー農園
 コーヒーの収穫は5月頃に始まりますので、訪問した3月には赤く熟したコーヒーの実はほとんど付いていませんでしたが、実がぎっしりと付いている様子を見ることができました。1本の木にこれほど実がなっており、その木が何万本とあるのですから、世界中でコーヒーが飲まれていることを実感することができました。
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      未成熟のコーヒーの実
 大農園では機械化が進んでおり、収穫期には自動収穫機で一気に収穫します。その分、葉や枝、その他の異物が混入しやすいので、精選工程が品質に大きく影響します。今回は収穫前でしたので、精選するための機械が動いている様子を見ることはできませんでしたが、無数にあるコーヒーの実をこの機械で処理するのはかなり時間がかかり、大変な作業であることは容易に想像できました。
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                    精選するための機械
 コーヒーは手間がかかる農作物です。他の農作物同様に、病気や虫害の心配があり、それを防ぐためにも普段から細やかな手入れが求められます。収穫時の忙しさはかなりのもので、家族経営の小農家は一家総出で収穫にあたりますが、中規模以上の農園では、労働量を外部に頼る必要があります。相場にもよりますが、コーヒーの生産には人件費がかかるため、比較的栽培が容易な大豆やとうもろこしの生産に移行する農家も増えてきているようです。
コーヒーのカッピング
 「カッピング」とはコーヒーの品質をチェックするために風味を評価することです。見学した農園で様々なコーヒーを「カッピング」させてもらいました。コーヒーの風味は生産国別に特徴があるのはもちろん、品種も様々にあります。さらに、同じ品種でも栽培される地域、農園が違うと風味も異なりますので、品質を評価するにはその微妙な違いを感じ取ることができる技術が求められます。
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      カッピングする様子
 近年、美味しさの評価基準として「スペシャルティコーヒー」という考え方が世界中で広まってきました。簡単にいえば、「スペシャルティコーヒー」に格付けされると、美味しいコーヒーであるというお墨付きをもらうことになります。その評価をするのは、SCAA(米国スペシャルティコーヒー協会)が定めた基準・手順によってコーヒーを評価することができる資格を持つ人で、その資格を「Qグレーダー」といいます。ブラジルでも行く先々で「Qグレーダー」を持っている方が非常に多かったです。
本場ブラジルのカフェで
 サンパウロ市内の有名なカフェでコーヒーをいただきました。産地別に「セラード」、「スルデミナス」、それから「モジアナ」という地域の3種類を比較できるセットを注文しました。訪れた地域を思い返しながら、本場ブラジルで味わうコーヒーはひと味違ったものに感じられました。
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最後に
 ブラジルに訪れたのは今回が初めてでした。訪問前にはブラジルは治安が悪く、ピストルを突き付けられて金品を奪われたといった話を聞いていたので、不安な気持ちがありましたが、実際に行ってみると明るくて親切な方が多く、充実した出張になりました。
 コーヒーに関しても、訪問前までは大量生産のイメージしかなく、品質にこだわりを持っている印象はなかったのですが、実際に現地では品質を向上させるべく、様々な取り組みを行っており、美味しいコーヒーを作るために努力を惜しまない姿勢がみられました。
 行くまでに片道30時間超もかかるブラジルではありますが、機会があれば是非とも再び訪れたいと思います。