新部 勝美

1. 少子化対策のアイデアに最大4,000万円を政府が自治体に交付
 政府は自治体が提案するオリジナルの少子化対策に対し、最大4千万円を交付する新事業を開始すると12年21日に発表した。経済の縮小や社会保障費の負担増大を招く少子化問題の抜本解決につなげたい考えである。「地域少子化対策強化交付金(仮称)」として、平成25年度補正予算に約30億円を計上し、都道府県4,000万円、市区町村800万円を上限に交付する。
 計画には、結婚から子育てまで「切れ目のない支援」の仕組みとして、①結婚に向けた情報提供、②出産・妊娠に関する情報提供、③結婚、妊娠・出産、子育てのしやすい環境整備のいづれかの事業を盛り込むことが条件となる。具体的には、若年層を対象とした妊娠・出産の適齢期に関する出前事業や、結婚を希望する人の相談窓口事業などが想定される。一部の自治体などで取り組みが盛んな結婚相手を探すイベント「街コン」(地域名を冠した合コンイベント)が交付対象として検討されたが、対象には含まれなかった。
 少子化対策、未婚化低減の動きは官民を問わず取り組まれている。今回の予算対象とならなかった、成婚を目的とした男女の出会い関連ビジネスに触れたい。
2. 結婚に対する意識
 民間業者はもちろん自治体主催の婚活イベントや合コンイベントが開催され、イベント開催数は増加したものの、未婚率は上昇している。
 内閣府が、20、30代の未婚男女と結婚3年以内の男女合計10,000 人を対象としたインターネット調査をもとに、平成23年5月に発表した「結婚・家族形成に関する調査」から以下のことが伺える(図1を参照)。
(1) 結婚意向
 未婚者のうち、将来結婚したい (「すぐにでも結婚したい」、「2~3年以内に結婚したい」、「いずれは結婚したい」の合計)とする人が 86.0%(男性83.3%、女性89.6%)であり、全体的に結婚への意向は高いと言える。
(2) 異性と出会う上での不安
 異性と出会う上での不安は、「自分は異性に対して魅力がないのではないかと思う」が男性と女性合わせて47.5%、「そもそも異性との出会いの場所がわからない」が 42.0%であった。「気になる異性がいても、どのように声をかけてよいのかわからない」においては男性の方が女性に比べ8.0 ポイント高い一方、「自分が恋愛感情を抱くことが出来るのか不安だ」で17.1ポイント、「そもそも異性との出会いの場所がわからない」では 8.3 ポ イント、女性の方が男性に比べ高い。
 つまり、「出会いの場所が分からない」という壁をクリアして、せっかく出会っても、気になる異性と上手にコミュニケーションできないと思う男性、恋愛感情を抱くことが出来るのか不安だと考える女性、という次の壁が存在している。
図表1:年齢別未婚率の推移
図1_20131231_01.jpg
3. 婚活ビジネス市場
 現在、結婚適齢期(20~44歳)にある独身男女は約1800万人で、上記調査でも触れた通り、その大多数が「結婚したい」「いつかは結婚する」と考えている人達だが、2012年までの累計婚活サービス利用者は約60万人(3%)程度であった(※)。
 しかしながら、「婚活」という言葉が時代のキーワードとして定着したように、最近までの出会いの主流だった「恋愛結婚」から昔からある「お見合い結婚」の必要性が見直され、婚活サービスやお見合い結婚の利用者が増加していると言われている。婚活業界の市場規模は現在500~600億円だが、婚活サービスに興味のある人(潜在顧客)は600万人=従来の利用者の10倍という調査結果も発表されている(※)。
 この中で、婚活ビジネス業界を牽引するリーディングカンパニーは、2012年にジャスダック市場に上場した総合婚活サービスを展開している株式会社IBJ(東京都新宿区)である。日本で初めてインターネット婚活情報サービス「ブライダルネット」をリリースした後、お見合いパーティー事業や対面型結婚相談所事業、婚活パーティーポータルサイト、合コン・街コンサイトなどを展開している。
※日本結婚相談所連盟調査結果(2013年実施)
4. 合コンサービスの現状
 2012年に流行語大賞にもノミネートされた「街コン」の開催数は、飛躍的に上昇した(図表2を参照)。しかしながら、イベントへの参加意向者を上回る無数のイベントが開催されており、競争激化による集客力の低下や、参加者満足度の低いイベント数が増加している。
 こうした状況に対して、2012年5月には一般社団法人日本合コン協会(東京都渋谷区)、同年9月には一般社団法人日本街コン協会(栃木県宇都宮市)などの団体が設立され、参加者利益確保の努める動きも広がっている。
 イベントも、様々な切り口で開催されており、地域名を冠した従来からの街コンに加え、女性に人気の男性職業を冠した職業別合コン(公務員、医師など)、エヴァンゲリオン好き、音楽フェス好き、登山好きなど共通趣味を冠した趣味別合コンや、企業コラボ合コンなどがある。
図表2:街コンの月別開催数の推移
図2_20131231_02.jpg
(転載元:国内最大級の街コンポータルサイト「街コンまとめ」http://machicom-matome.com)
5. 今後の課題
 出会いの機会を提供する民間企業や自治体は増加しているものの、未婚率は増加の一途をたどっている。様々な問題が複合的に影響していると思われるが、その1つには出会いの機会を提供するイベントの質に課題があるようだ。
 街コン自体の認知度が一気に広がった頃から、安易に街コンを開催する業者が増加した結果、前出の一般社団法人日本合コン協会には以下のような、質の低いイベントや悪質な主催者の事例に関する相談が寄せられるようになった。
①街コン開始後、主催者からの進行や指示が何もなく、初対面同士の参加者間のコミュニケーションが取れない、非常に雰囲気の悪い中で過ごさざるを得なかった事例。
②事前に告知していた飲食店舗とは、明らかに違う店舗で開催された事例。
③参加者募集の告知を途中で打ち切り、街コン自体を中止したにも関わらず、参加者に参加費を返金しない事例。
 また、「婚活疲労症候群」、「婚活疲れ」などのキーワードが度々メディアに登場し、婚活イベントに参加している人の中でも、サービス自体への不満から婚活自体を止めてしまう層が増えているとのことである。
 「2. 結婚に対する意識」の調査結果にある「出会いの場所が分からない」という多くの声に対しては、開催機会の増加により一定の環境ができつつある。今必要なのは、その次の壁である「気になる異性と上手にコミュニケーションできないと思う男性、恋愛感情を抱くことが出来るのか不安だと考える女性」という不安に応えることである。
 サービス本来の目的である「成婚」に至る男女マッチング率の向上を、主催者側が成果として定義し、その成果を出すことができる主催者を養成するなど、参加者視点にたったサービスの「質」向上への取組みが求められる。
■新部 勝美
中小企業診断士 
(一社)東京都中小企業診断士協会 中央支部 執行委員
(一社)日本合コン協会 理事
(独)中小企業基盤整備機構 販路開拓ナビゲーター
東京商工会議所 エキスパート 
東京都商工会連合会 エキスパート