物流は、私たちの暮らしやビジネスを支える重要なインフラである。生産地でとれた農作物や工場で生産された製品を消費地に運ぶことで需要を満たしている。さらに海外で生産された商品は、荷役や通関業務を通して国内の市場に送り込まれて消費されている。

しかしながら、近年の物流業を取り巻く環境は、非常に厳しいものがある。原油価格の高騰に加えてロシアのウクライナ侵攻の影響でエネルギー不足に陥っている。加えて米国の景気対策、物価高対策の一環で金融引き締めを行ったことから、日米の金利差により為替相場場が大幅な円安をもたらし、物流業を取り巻く環境は厳しくなっている。

人材面では、ドライバーの高齢化や若手の車離れドライバー人口減少を背景としてドライバーを中心に深刻な人手不足となっている。

物流業者の抱える問題の一つに「物流の2024年問題」がある。働き方改革関連法により、労働環境改善に向けた取り組みが求められている。ドライバーの高齢化対策や安全対策のため働く環境の改善を目的として労働時間に制限をかけることでドライバーの安全確保と健康を守るとともに事故防止を図るものである。この規制に対応できるようにするために、物流業者はドライバーの労働環境を整備するとともに必要な人員を確保することが必要である。また、自動運転車両を導入するなどの検討が望まれる。

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交通事故による死亡事故が減少する一方で事業用トラックが第1当事者となるケースは依然として多く、トラック運転手の労働環境を改善することが求められる。
令和6年4月1日の制度開始に向けて、必要な人員確保と車両や職場環境の整備に努めることが必要である。

厚生労働省では、「トラック運転者の労働時間等の改善基準」を示して運転者の安全を守るよう求めている。その主なポイントとして、拘束時間の制限と休息期間の確保、運転時間の限度、時間が労働および休日労働の限度がある。

1か月間の拘束時間は原則として293時間である。但し、労使協定により1年間の拘束時間の合計が3516時間を超えない範囲で1か月の拘束時間を320時間まで伸ばすことができる。また、1日の拘束時間は13時間以内で延長の場合でも16時間が限度である。1日の休息時間は勤務終了後、継続8時間以上となっている。

2024年4月からの改正では、1年間の拘束期間の合計が3300時間でかつ1か月の拘束時間は284時間で最長310時間までとなる。1日の拘束時間は13時間以内で延長の場合の限度が15時間となる。休息時間は、継続11時間以上与えることを基本として、継続9時間を下回らないものとなる。

1日あたりの運転時間は、2日間平均で9時間が限度である。週単位では44時間が限度である。連続運転時間は4時間が限度で30分以上の休憩等を入れなければならない。

時間外労働および休日労働を行う場合には、労働基準法第36条第1項に基づく時間外労働および休日労働に関する協定届を労働基準監督署に届けることが必要である。

物流事業者は、以上のようなトラック事業者の労働時間等の改善基準のポイントを踏まえてドライバーの労働環境を整備するとともに必要な人材確保が望まれる。

 

物流業者を取り巻く経営環境は厳しく、物流の2024年問題として、働き方改革関連法による労働環境改善の取り組みが求められている。ドライバーの安全確保と健康を守るとともに必要な人員を確保することが必要である。

 

【略歴】
宮川公夫
中小企業診断士
ITコーディネータ
家庭用品・スポーツ用品メーカーを退社後、業界調査等の執筆活動を中心に活動。