活動報告

専門家コラム「経営革新計画書の作成方法と活用メリット!」(2025年7月)

今回は、「経営革新計画書」の作成方法と、その活用によるメリットについて解説します。計画書の作成はややハードルが高い印象があるかもしれませんが、実は中小企業にとって大きなチャンスでもあります!

■なぜ今、経営革新が必要なのか?
中小企業を取り巻く経営環境は、ここ数年で大きく変化してきました。従来通りのやり方では通用しない局面が増えており、「経営革新」によって新たな成長の道筋を描くことが求められています。特に以下の4つの要因は、経営環境に大きな影響を与えています。

●少子高齢化による労働力人口の減少
日本は急速な少子高齢化の進行により、労働力の中心を担う「生産年齢人口(15~64歳)」が年々減少しています。これにより、多くの中小企業が慢性的な人手不足に直面しており、従来の人海戦術や人手依存型ビジネスの継続が困難になっています。今後は、省人化や自動化、業務効率化など、構造改革を伴う新たな取り組みが不可欠です。

●賃金・原材料価格の上昇による収益圧迫
人手不足の深刻化により、賃金水準は上昇傾向にあります。一方で、原材料やエネルギーの価格も世界的に高騰しており、調達コストの増加が企業の利益を直撃しています。価格転嫁が難しい中小企業にとっては、収益構造の見直しや高付加価値型への転換が急務となっています。

●デジタル化・グローバル化の加速
コロナ禍を契機に、EC・オンラインサービスの普及や業務のデジタル化が一気に進みました。また、企業間の競争は国内にとどまらず、海外市場や海外企業との競争も日常的になりつつあります。こうした環境では、「従来のやり方を続けること」自体がリスクとなり、デジタル活用や新市場開拓といった革新が競争力のカギとなっています。

●為替やエネルギー価格の変動リスク
近年は円安の進行や原油価格の変動など、マクロ経済の不確実性が高まっています。こうした外部要因の影響を受けやすい業種・業態では、為替リスクやコスト上昇に対応できる柔軟な体制が求められています。一つの事業や取引先に依存するのではなく、収益源を分散する経営モデルへの転換が必要です。

これらの要因は今後さらに強まると予想されます。だからこそ、経営革新計画のように「将来を見据えた戦略的な取り組み」が、持続的成長を実現するための鍵になるのです。

■ 経営革新計画とは?
「経営革新計画」とは、中小企業が新たな事業活動に取り組むことで、経営の相当程度の向上を目指す中長期的な経営計画書のことを指します。これは単なる事業のアイデアや販促計画ではなく、将来的な成長を見据えた“戦略的チャレンジ”を明文化するものです。

●「新事業活動」とは?
経営革新計画における「新事業活動」とは、たとえば以下のような取り組みを指します

*自社初となる新製品や新サービスの開発・提供
*これまでとは異なる市場への参入(新たな顧客層・販路の開拓)
*業務プロセスや生産方式の革新(効率化やコスト削減のためのシステム導入等

ポイントは、「自社にとって初めての取り組み」であれば、必ずしも世の中でまったく新しいものでなくても良いという点です。

●「経営の相当程度の向上」とは?
計画を承認してもらうためには、ただ新しいことを始めるだけでなく、それが将来的に企業全体の業績や生産性、収益性を改善する見込みがあることを数値で示す必要があります。たとえば、

*付加価値額の向上(=営業利益+人件費+減価償却費)
*給与支給総額や一人当たり付加価値額の増加

具体的な経営指標を使って「どれくらい向上するか」を明示することが求められます。このように、計画の“実現可能性”と“定量的な成果見通し”が重視されるのが、経営革新計画の大きな特徴です。

■作成のポイント
① 新規性があること
「自社にとって初めての取り組み」であることが求められます。
他社がすでに実施している内容でも、自社がこれまで行っていなかった事業や方法であれば対象になります。

② 実現可能性があること
きちんと、新規事業を立上げ、実行できる根拠があることが必要です。
人材・資金・設備・協力先の体制や、ノウハウが整っているか、スケジュールは現実的か、事業の収支見込みは妥当かなどが見られます。机上の空論ではなく、「ちゃんとやれそうだ」と思わせる計画であることが大切です。また、立ち上げた事業(新サービス)がユーザーから選んでもらえるか、つまり他社との違いを明確にする必要があります。

③なぜやるか
内部的理由だけでなく、外部的理由があることも重要なポイントです。その新規事業が「なぜ今、必要なのか?」という“社会や市場のニーズ”に基づいていることが重要です。「困っている人がいる」「満たされていない市場がある」「社会課題がある」といった背景をもとに、「だからこの新事業が必要」という視点が重要です。

経営革新計画書の作成は、自社の将来を見つめ直し、新たな一歩を踏み出すための大切なプロセスです。市場の変化や社会のニーズに応える新たなチャレンジを、しっかりと計画に落とし込み、実行に移していきましょう。

このブログが、経営革新計画に取り組む皆さまの一助となれば幸いです。

金子 和博

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