活動報告

経営相談Q&A「最近副業・兼業人材が注目されているようですが、中小企業でも副業・兼業人材を活用することはできますか?」(2025年12月)

【質問】
「最近副業・兼業人材が注目されているようですが、中小企業でも副業・兼業人材を活用することはできますか?」

【回答】
 副業・兼業人材は「採用できない人材」を「活用できる人材」に変える存在であり、中小企業の成長を支える有力な選択肢となります。以下に中小企業が副業・兼業人材の活用を成功させるためのポイントを解説いたします。

1.中小企業における副業・兼業活用の現状
近年、副業・兼業が人材確保の手段として注目される背景には、少子高齢化による労働人口の減少、採用競争の激化、そして働き方の多様化があります。特に中小企業では、専門性の高い人材をフルタイムで採用することは容易ではないため、必要な時に必要なスキルを外部から柔軟に取り入れるニーズが高まっています。
<副業解禁>
以前は「副業禁止」が一般的でしたが、2018年のモデル就業規則改定や働き方改革関連法の施行により、副業・兼業は国としても推進される方向に変わり、企業側も制度整備を進めやすくなりました。また経団連の調査によると、従業員300人未満の企業でも約4割が副業・兼業人材の受入れを認めているという結果が出ており、年々増加傾向にあります。
<リモートワークの普及>
コロナ禍以降のリモートワークの普及により、地理的・時間的な制約が大幅に緩和されたことも追い風です。地方企業が都市部の高度人材とつながるケースも増え、これまで出会えなかった人材と協働できる環境が整いつつあります。副業・兼業は、中小企業が競争力を維持し、変化の激しい市場に対応するための現実的な選択肢となっています。

2.副業・兼業人材活用のメリット
副業・兼業人材を活用する最大のメリットは、「必要なスキルを必要な分だけ」取り入れられる点です。フルタイム採用が難しい高度専門人材でも、週数時間から関わってもらうことで、事業の推進力を大きく高めることができます。主なメリットを挙げますと、
・通常の採用では出会えない人材と協働できる
大手企業や外資系企業で経験を積んだプロフェッショナルが、副業として事業に参画するケースも増えています。
・自社にない知見・ノウハウを獲得できる
マーケティング、DX、デザイン、経営企画など、専門性の高い領域で即戦力として活躍が期待できます。また外部者だからこその客観的視点も得ることができます。
・既存社員の刺激・育成につながる
外部人材との協働により社内が活性化し、社員のスキルアップや意識改革が促されます。
・事業スピードが上がる
新規事業や業務改善などの停滞していたプロジェクトを一気に進めることも可能です。

3.副業・兼業の形態と特徴
副業・兼業の活用方法には複数の形態がありますので、自社の目的や業務内容に応じて選択しましょう。
A.タスク型(短期・成果物中心)  想定期間:1〜3ヶ月
明確に定義された業務を短期間で依頼する形式です。
(活用例)Web制作、ロゴデザイン、資料作成、翻訳など
B.プロジェクト型(中期・課題解決型)  想定期間:3ヶ月〜2年
特定のプロジェクトに継続的に関わる形式です。社内に不足している専門性を補いながら、事業を前に進めることができます。
(活用例)ECサイト立ち上げ、新商品開発、業務改善プロジェクト
C.ミッション型(長期・経営課題対応)  想定期間:1〜5年
経営戦略や組織変革など、深く関与して中長期的な視点で企業の成長を支える役割を担います。
(活用例)経営アドバイザー、事業開発責任者、技術顧問
<契約形態>
自社の課題や期待する役割に応じて、最適な形態を選ぶことが成功の鍵となります。
・雇用契約(パート・契約社員)
指揮命令が可能で業務管理がしやすい反面、本業との時間外労働を通算するなどの労務管理が必要です。
・業務委託契約
労務管理が不要のため比較的導入しやすく、実際に多くの企業と副業・兼業人材の双方から選択されています。副業・兼業のマッチングプラットフォームが数多く存在します。

4.活用時の注意点と成功のポイント
副業・兼業人材を活用する際には、以下の点に留意する必要があります。
①業務範囲と期待値の明確化
「何を、どこまで、どの期間で」依頼するのかを明確にしないと、双方の認識がずれて成果が出にくくなります。特に業務委託では、成果物・役割・コミュニケーション頻度を事前に十分にすり合わせておくことが重要です。
②情報管理と競業リスクへの配慮
秘密保持契約(NDA)の締結は必須です。また、本業先との競業避止義務に抵触しないかどうかの確認も必要です。
③社内の受入れ体制づくり
外部人材が力を発揮できるかどうかは、社内の理解と協力に左右されます。担当者の配置やコミュニケーションルールの整備が欠かせません。
④カルチャーフィットの重視
スキルだけでなく、企業理念や価値観に共感しているかが長期的な成功を左右します。
⑤中長期視点での活用
短期成果だけを求めると外注と変わりません。ノウハウを社内に移転し、組織力を高める視点が重要です。

以上のように、副業・兼業人材活用にはいくつかの注意点も存在しますので、初めての導入時やさらに効果的な活用を検討される場合には、その分野に詳しい専門家のアドバイスを受けながら人材活用を進めていくことをお勧めいたします。

【略歴】
小犬丸信哉(こいぬまるのぶや)
東京都中小企業診断士協会 中央支部 執行委員
中小企業診断士、2級キャリアコンサルティング技能士、産業カウンセラー
公益財団法人東京しごと財団委嘱 令和7年度副業・兼業人材専門相談窓口 相談員

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