2025年10月22日(水)、中央支部国際部主催による2025年度第4回「国際派診断士リーダー養成講座」(国際社中)が中央支部事務所とオンラインのハイブリッドで開催されました。
国際社中とは
中小企業の経営支援を行うなどの活動において、事業の海外展開について、関わったことはないがその方法を知りたい、海外展開の支援をやってみたい、また支援要望を受けたがどうすべきか分からない、と感じる方も多いのではないでしょうか。
中央支部国際部は、「海外に関わる中小企業診断士の知見向上を目指した機会の提供」を方針に挙げ、海外展開支援のために必要な基礎知識を身につけ、海外展開支援の実務に携わりたいと考える診断士会員に、その目標へ一歩も二歩も近づくための機会を提供する講座の1つとして、「国際派診断士リーダー養成講座」(通称「国際社中」)を開催しています。最終回となる第4回は、展示会営業の専門家である清永健一(きよながけんいち)さんに、海外展開に向けた展示会出展のイロハを熱く語って頂きました。
日本唯一の展示会営業コンサルタント
清永さんは、展示会を活用した売上アップの技術を教える、日本唯一の展示会営業コンサルタントです。中小企業への支援実績は1,300社を超え、全国の商工会議所などの公的機関での支援実績も多数、メディア出演も多く、著書「展示会営業」ほか7作はいずれも、Amazon部門1位を獲得しています。
展示会の大きな効果
冒頭に清永さんより、展示会により効果を上げた例の説明がありました。
・展示会から1か月も経たないうちに契約を獲得した
・展示会から数年のフォローを経て大型案件の受注につながった
・出展費用の数十倍からそれ以上の効果となった
また、展示会においてテレビ局の取材を受け、その番組を見た事業者からの案件獲得につながった例もありました。
セミナーの中では、展示会で効果を挙げるための進め方等の解説が行われました。主な点は以下のとおりです。
・自社と商品に関する1分間自己紹介を準備する。これは「興味喚起、出展商材と提供価値、独自の特徴とストーリー、行動特性」を1分間で説明する。多くの出展者が訪問者への説明に長い時間をかける中、短い時間で端的に説明して顧客にアピールする。
・展示会を進める社内体制を整備する。一人の担当者に任せるのではなく、3名から8名程度のプロジェクト(PJ)・チームで対応する。社内に次回以降に対応するノウハウを残す。具体的には、
1. PJオーナーは社長が務め、社員を任命する際には展示会の重要性を説明し、PJメンバーへの期待を伝える。
2. 社内横断的なメンバーで構成する。営業(フロント)に加えて、事務(バック)も含めた各部門からのメンバー構成とすることにより、どの会社にもあるセクショナリズム打破のひとつのきっかけにする
・ターゲットを「1ブース=1アイテム(1ソリューション)=1ターゲット」に絞りこむ。それによりコンセプトが磨き上げられて、来場者に伝わる。
・来場者の会社の業種だけでなく、どの部門の担当者かを考えて対応する。製造業の場合、開発・製造・購買の部門のそれぞれの立場に立って考えてみる。開発では新技術開発を、製造はコストダウン技術やトラブル対応を、購買は価格、と同一の企業でも部門により求めるものが異なる。相手の求めるものに対応する。
・準備の磨き上げとして、「展示会コンセプト検討シート」を活用する。清永さんのSNSにも紹介されています。是非、ご覧ください。
続いて、海外バイヤーとのやりとりの留意点がありました。
国内展示会に海外バイヤーが来場者として参加する場合
海外バイヤーは商談をするために参加しており、独自の特徴と商品のストーリー、売り手の信頼度、取引条件を提示する必要性が強調されました(日本のバイヤーの多くは情報収集に来場します)。取引をする際には、直接取引の他に商社経由の取引もあり、取引の経験が乏しい段階では商社経由での取引も選択肢であることが説明されました。
海外バイヤーには、写真撮影の効果が強調されました。ブースに訪問を受けた際に、双方の担当者が、ブースと商品と一緒に写真を撮る。次回の連絡にその写真を添付することで、相手の反応は格段に高まるとのことです。先方にとってはどのような製品だったかが分かり、当方にとっては先方の担当者の顔が分かり双方にメリットがあります。
海外展示会に出展する場合
出展の前に、まずは来場者として参加し様子を見てみることが勧められました。また、実際に出展する際には、事前に業界紙から現地の情報を収集し、事前に案内を送付します。その際には相手にとってのメリットを記載、フォローを繰り返し行うことが成功の可能性を高めることにつながります。
最後に
講師からは、これまでの内容を踏まえて「展示会で会社を強くする!」とのメッセージがありました。展示会の効果は、販売促進はもちろんのこと、参加によるPJチームを構成して社内の各部門の連携を高めてセクショナリズムを打破したり、社内の情報の整備が挙げられました。会社の多くは既存顧客のデーターベースを保有するものの、見込み客や休眠・不稼働顧客のデータ(名刺)は営業員の机に眠ったままがほとんどです。展示会の参加案内を顧客に送るために、営業員が保有しているデータを社内全体で管理することにより、情報という営業資産を質・量ともに高めるメリットが挙げられました。]
展示会に関する内容はもちろんのこと、講師の巧みな話術、時には笑いを誘う場面もあり、予定された90分はあっという間に過ぎました。セミナー後は懇親会に場所を移し、講師、参加者、実行委員が懇親を深めました。
セミナーを終えて
参加者からは、講師の実務や経験に基づいた具体的な内容に関して感謝の声が多数寄せられました。
・ 内容は面白く、ためになった。もっと長い時間の話を聞きたくなった
・ 今まで何気なく展示会に参加していたが、今回の内容に沿って訪問や事業者の支援を行ってみようと思う
・顧客の立場だけでなく、顧客のどの部門(開発・製造・購入)や立ち位置(卸の場合、自社や小売りに対するメリット)を考えて説明する重要性を認識した
・展示会コンセプト検討シートを使ってみようと思う
・日本の例をベースに、日本における展示会での海外バイヤーへの対応や、海外の展示会に参加する際の留意点も説明されたので大変役にたった
・今回のセミナーは展示会であったが、この考え方自体は診断士としての自分の強み・アピールにも活用できると思ったとの感想・意見がありました。
まとめ
全体を通して、展示会においてすべき内容を多数、具体的に紹介されたので、取り組んでみたいとの声が参加者から多くありました。
本年度の国際社中は能力開発部との共同開催も含めて4回が終了しました。多数のみなさまにご参加いただきありがとうございました。















