新型コロナウイルスの蔓延、エネルギー価格の高騰等原材料費を初めとする資材の高騰など外部環境の変化、震災等による生活基盤の喪失等、それも中小企業として統制不可能な要因で外部環境が激変している。
 その中で、持続化補助金やゼロゼロ融資等による政府機関による支援等の公助、地域コミュニティを中心とした共助、中小企業自身の努力による債権活動等の自助、災害対策の3つの要素、「公助」、「共助」、「自助」がうまく機能することによって、近年発生した大きな災害に対応している状況である。

 私は、特定地域の中小企業を毎月50社程度戸別訪問し、支援関係の情報を提供すると共に、大きく変化する外部環境に対応する各業種の情報を聞く機会を頂いている。いろいろな業種の多くの企業の経営者や従業員の方にお話を聞いていると、これら統制不可能な外部環境に“強み”を活用して適合しようと努力する企業と、資金繰りや新規顧客確保等々に鋭意努力はしているものの適合できない企業とに差が生じていることを痛感する。

 起業し数年事業運営し収益を確保することができている企業は、何かしらの“強み”を持っており、その“強み”を活用して収益を確保している。その既に持っている“強み”をどう育成しているかしてないかが、企業の継続性において差となって現れていると考えている。

 新型コロナウイルス感染防止下においては、3密となる飲み食いの頻度を減らすため飲食店を中心に休業が推奨され、たとえ補助金が支給されたとしても収益性が激変した企業が多かった。そのため公助だけに頼らず、この統制不可能な環境要因に対し、持ち帰りやデリバリー等での販売を実施し収益性の悪化を少しでも補填しようとした自助努力が見られた。好立地店や味や商品のブランドに“強み”がある店でのデリバリー等の販売は、“強み”が明確でない店の販売と比較し自助努力の効果に小さな差が見られた。
 エネルギー価格の高騰による仕入等の高騰に対しては、店として目玉になる商品の価格は大きく変えることなく、個々のメニューによって値上げ幅を変え、顧客が期待する価値は大きく値上げせず、他の提供サービスを適正化することで、環境の変化に対応しようとする自助努力が見られた。

 これらの対応で、大きな環境変化に対応できるとは言わない。しかしながら、自分の“強み”を再度認識し、その“強み”をどう活用するかを考え対応することは、新たな“強み”を生み出す可能性もあるのではないか。大きな環境変化の波が収まったときに、“強み”を十分意識していない企業と比較し、災害後の集客力等に大きな差が生じていると、企業を巡回していて感じている。
 経営者は事業運営する上で、自社の“強み”は何でどう育成するかを経営課題の1つとして意識することで、統制不可能な環境要因に対しても統制可能な環境要因として、対処することが必要だと思われる。

 新型コロナウイルス感染も落ち着いたものの仕入等の高騰は油断を許さない環境ではある。とはいえ、一度自社の“強み”の棚卸とその育成方針を見直すことを推奨したい。

鈴木 克実(スズキ カツミ)
経済産業大臣登録 中小企業診断士
港区企業巡回相談員
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会 中央支部 研究会部副部長