DXとは?:生き残りをかけた「ビジネスモデルの変革」
今やDXはビジネスにおいて最も重要な経営戦略の一つとなっています。
一方で単なるデジタル化(デジタイゼーションやデジタリゼーション)と混同されることも多いため、言葉だけが先行しDXの本質、すなわち競争優位性を確立するという本来の目的が理解されていない場面も見受けられます。
DXのキーとなるのは「データとデジタル技術を活用」し顧客や社会のニーズを基に製品やサービス、ビジネスモデルを変革することです。
企業がビジネスモデルを変革するのは、激しいビジネス環境の変化に対応し競争上の優位性を確立するためにほかなりません。DXが重要になるのはこの競争に勝ち残るための取り組みだからです。

身近なDXの事例:変革のインパクトを実感する
DXとは何かを言葉で表しましたがイメージが付きにくいと思いますので、DXがもたらした「破壊と成長のインパクト」の具体例を基にみていきましょう。
事例1:ビジネスモデルの変革 — ブロックバスターの失敗とNetflixの成長
「ブロックバスター」という会社をご存じでしょうか?知らない方も多いのではないでしょうか。
一方で「Netflix」は多くの方がご存じだと思います。
Netflixとブロックバスターはかつて米国のレンタルビデオ事業を牽引する同じ競合でした。
しかし、ブロックバスターは店舗展開にこだわり続けた結果、経営破綻しました。
一方のNetflixは、デジタル技術(インターネット)の発展に乗りオンライン対応や自前コンテンツの開発にシフトすることで成長しています。
この事例が示すのは「生易しい変化」ではないということです。デジタル技術によるビジネスモデル変革に対応したか否かで企業としての生き残りが決定されるという「生きるか死ぬか」の大きな違いが生じました。

事例2:ビッグデータの有効性 — なぜネットショップで高額品を購入するのか
私たちは本屋に行き新聞広告などで知った本を買っていましたが、今やネットでも購入できます。さらに、本だけでなく家電や野菜までも購入できる時代となりました。

従来、高額な買い物である家電などは、実際にモノを見たり専門家に説明を聞いたりすることで安心を得て購入判断を行っていました。
では、なぜ私たちはネットで高額商品の購入判断をできるようになったのでしょうか?
それは多くの人の意見(ビッグデータ)が不安を解消する役割を果たしているからです。
ビッグデータの活用例(洗濯機):
例えば、一人暮らしの方からの良いコメントが多い「洗濯機X(容量小、時間がかかるが自動乾燥機付き)」と、子どもがいる家族からの良いコメントが多い「洗濯機Y(容量大、短時間だが乾燥機なし)」があった場合、利用者は自身のニーズ(例:一人暮らしならX)に基づいて選択できます。ビッグデータによりユーザーは自身の状況に合致した製品を選び安心して購入できるようになったのです。

事例3:目に見えない業務の変化 — 切符から交通ICカードへの変化
従来は公共交通機関を利用するときには「切符」を使っていましたが、今や「交通ICカード」に変わったことで利用者側には乗り継ぎが楽になるなど目に見える変化がありました。
一方で、経営視点から見ると目に見えない業務の変化(ビジネスモデルの変革)が同時に起きています。
①切符がなくなる(保守コストの削減):
切符は改札機で詰まることがありますが、これがなくなると紙詰まり時に駆けつける保守員を削減するなど効率的な配置をしたりすることが可能となります。これにより保守費用の削減が可能となります。
②券売機がなくなる(お釣りという概念の消失):
券売機がチャージ機に置き換わる傾向があり切符購入時のように物理的にお釣りを渡すことがなくなります。電子マネーではお釣りを渡してもらうというやり取りがなくなり、お釣りを受け取るという概念自体をリアルに感じなくなっています。
③データ活用による競争優位性の創出:
私たちが自動改札機を通ることで年齢、性別、乗降駅、どの改札機を利用したかといった目に見えないデータが分かります。
・人員配置の最適化:この人流データ(混み具合)を活用し駅員の配置を調整したり、利用の少ない時間帯や場所の無人化を進めたりすることが可能になります。
・マーケティングへの応用:例えば「東口は男性の定期券利用者が多い」と分かれば、東口売店の品揃えを男性会社員のニーズに合った「がっつり系のお弁当」や「出社前の缶コーヒー」などに変えるといったマーケティングにも利用できます。
このようにDX化を推進する上で人間の思考や感覚だけでは気づけない事実を教えてくれるビッグデータの戦略的活用は最も重要な要素の一つです。
[参考資料]
デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会 中間とりまとめ(METI/経済産業省)
[プロフィール]
勝目 猛(カツメ タケシ)
学生時代は野球部の副将としてチームを牽引し、その経験を生かして大手総合電機メーカーのIT事業部にて社内教育、海外ビジネス、パートナー支援、テクニカル部隊、SE、企画部門など、国内外の多様な部署でプロジェクトを担当。
社内アイデアコンテスト優勝、中央支部講師オーディション優勝などの実績を持ち、現在は経営者のみらいに寄り添うコンサルティング、企業研修、補助金申請支援などに日々尽力中。














