星 多絵子

0.序章~私と父との関係~

こちらをご覧になっている皆様、お疲れ様です。今回、私ならではの視点でのコラムです。最後までお付き合いいただければ幸いです。

まず、少し風変わりな父の紹介をさせてください。

46年前、「イクメン」などという言葉もないうちから、父は赤ちゃんだった私のおむつ替えや寝かしつけをしていました。私が小4の頃には、母も仕事に出ていたため、父が休日に裁縫や料理を教えてくれました。当時は残業続きで、日にちが変わる頃帰ってくる父でしたが、少しの時間でも私に気をかけてくれました。このため、大人になった今でも父との関係は良好です。誕生日にお互いお花を送り合う仲です。子供の頃、どれだけ父親とかかわったかによって、その将来は大きく変わることを身をもって知りました。

さて、現在の男性の育児はどうなっているでしょうか。残念ながら、子供と向き合う時間が少ないのが現状です。この問題点のひとつ、パタニティ・ハラスメント(パタハラ)について、書きます。

 

1.パタニティ・ハラスメント(パタハラ)とは

「パタハラ」とは、パタニティ・ハラスメントの略。 パタニティ(Paternity)は英語で“父性”を意味します。男性が育児参加を通じて自らの父性を発揮する権利や機会を、職場の上司や同僚などが侵害する言動におよぶことを、パタニティ・ハラスメントと呼びます。

パタハラを端的に表しているものとして、男性の育児休暇取得率の低さが挙げられます。男性の育児休業取得率は、現状では5.14%(厚生労働省「平成29年度雇用均等基本調査」)にとどまっています。同調査では、女性は83.2%となっており、男女差は大きく開いています。(図表1)これは、女性に育児負担がかかっている現状を反映しています。

 

図表1:育児休暇取得率の推移

図表1

 

このことを踏まえ、男性の育児休暇を企業に義務付けてはどうかという議論が起こっています。こちらは企業への義務付けであり、個人に対するものではありません。

 

2.男性の育児が必要な理由

では、なぜ男性の育児が必要とされているのでしょうか。「男性は仕事、女性は家事・育児」という価値観は、高度経済成長を支えていました。高度経済成長では、労働者が長時間労働をして大量にモノを作っていれば売れました。しかし、現在はモノが充足し、作っても売れない時代に。経済の縮小が家計を圧迫し、夫の稼ぎだけでは家計を賄えなくなります。このため、妻が仕事をするようになります。妻が出産して、次の子供を望んでも、夫が育児に協力できない今の環境では、難しい。さらに少子高齢化が加速します。長時間労働を規制する働き方改革が推進されるのは、価値観が変わったことを意味します。

 

では、実際に夫がどれだけ家事・育児に参加しているでしょうか。日本は1時間23分と先進国中最低の水準となっています。(図表2)

図表2:6歳未満の子供をもつ夫婦の育児・家事関連時間 国際比較

図表2

 日本では、まだまだ「男性は仕事」の価値観が根付いています。

しかし、若い子育て世代は、男性が育児をすることにメリットを感じています。

それは、経済や労働力の視点からだけではありません。夫が育児できれば、妻の負担が減ります。ワンオペ育児からの解放です。また、子供と父親との関係もグッと近くなります。もし、夫が子供の育児をしなければ、いくつになっても子供からなつかれない「父親の他人化」にいたることも。個人だけでなく、企業や組織もこのことに危機感を持たなければなりません。

 

3.パタハラで裁判にまで至った事例と教訓

それでは、パタハラがどれだけイメージに影響を及ぼすか、具体的な事例を挙げます。

 

A病院は男性看護師が育休で3カ月休業したことを理由に昇給を認められないうえ、昇格試験も受けられませんでした。労働局から是正勧告を受けたにもかかわらず、A病院は態度を変えません。

男性看護師はA病院を相手取り裁判に訴えます。

一審の地裁では、昇給の金額が小さいことなどから、昇給を認めなかったことは育児介護休業法10条の不利益取扱の禁止に反しないと判断。昇格試験を受けさせないことについては、違法としました。

 

男性看護師はこれを不服として控訴します。

 

控訴審の高裁では、昇給について、病院が、遅刻・早退・年次有給休暇・生理休暇・慶弔休暇等により3ヶ月以上の欠勤が生じても職能給の昇給を認める扱いをしていた。

それにもかかわらず、育休で3ヶ月欠勤した場合に昇給を認めないのは合理性がないとして、昇給分の請求を認めました。

 

この事例、教訓が3つあります。

1.男性の育休を認めないパタハラは、時代に合わない。

2.大きなもめごとを起こす組織は、規則が整備されていないうえに矛盾している。

3.裁判になると、組織の社会的イメージが悪くなる。

 

組織は人を多く雇うことで成り立ちます。時代は大きく変わりました。それなのに旧態然とした労働条件のままで良いのでしょうか?男性が育休をとれる組織は、誰にとっても働きやすい職場なのではないでしょうか。育休の取りやすい職場は「パタハラがない」というイメージアップにもなり、人が集まりやすくなります。

 

4.最後に

男性が育児できる環境は、イメージアップになり、人が集まりやすくなります。ただし、つい育休が「育児休暇」ではなく、「育児休業」であることを忘れがちです。休めると喜んで、夫が「大きな長男」になってしまったのでは、妻の負担がより増してしまいます。このことは、育休を与える企業や組織、育休を取る本人ともに肝に銘じなければなりません。子供の愛らしい瞬間・瞬間を一緒に過ごせる人が増えることを願っております。

 

【略歴】
星 多絵子
病院の受付・レセプト点検から一般企業の経理、社会福法人での内部統制、会計事務所でのコンサルティングを経て、独立開業。医療・介護・福祉業界のコンサルティングをメインとして活動している。
中央支部of the year受賞2回。執行委員。広報部副部長。広報での写真撮影も行う。