Global Wind (グローバル・ウインド)
はじめてのロシア出張
~ 厳寒の季節、強行軍、ハプニング ~

中央支部・国際部 鴨志田 栄子

~ はじめに ~
 2012年2月末、顧客管理に関するセミナー講師として、初めてのロシア出張が実現した。
 出張直前に、現地から「マイナス20度を下回ることがなくなったので、春は近い」とのメッセージが届いた。日本にいる私には実感がわかない。一応、それなりの防寒準備をして出発した。
 また、今回は、現地滞在5日間で、離れた3都市で計4日間のセミナーをするという強行軍であった。もともとタフな私は、強行軍は問題なかったが、初めてのロシア出張は、普段経験できないこと続きの珍道中であった。
1.最初の訪問地「サマーラ」
 ヴォルガ川東岸に位置する産業都市である。主な産業は、機械工業、化学工業、航空宇宙産業などである。宇宙飛行士ガガーリンが初飛行後に立ち寄った街であり、町の中には宇宙関連のモニュメントも見られる。
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宇宙船のモニュメント     宇宙飛行士のモニュメント
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背景のヴォルガ川は凍結している
写真左は通訳の女性
●<強行軍のはじまり & スーツケースが開かない!>
 成田を出発して、モスクワで現地の日本センターの職員と合流して国内線に乗り換え、サマーラの空港に到着したのは、予定より1時間遅れの夜中の1時だった。それからホテルにチェックインしたのが午前2時過ぎ。
 ここで、ハプニング発生! スーツケースが開かない! 何度確認しても、暗証番号はあっているはずだ。間もなく夜中の3時になる。翌朝は9時から17時まで講義予定であり、開けるための知恵もないため、スーツケースを開けることは断念した。明日の仕事の資料は手荷物にある。洋服はスーツを着て移動したので何とかなる。何とかならないのは化粧品! でも、通訳の方が女性だったのがラッキー! 彼女から借りれば、ある程度は何とかなる!と覚悟して、とりあえず、バスローブを着て就寝。
 翌朝、朝食時に、現地スタッフにそのことを話すと、すぐにスーツケースを見にきてくれた。私のスーツケースのダイヤルロックを一つずつ動かし始めた。ひたすら、ダイヤルを回している・・・、数分後、開いた! 3ケタの暗証番号のうち1ケタの数字が、1数字分ずれてしまっていたのだった。そういえば、閉める時に、無理にファスナーの金具を押し込んだ記憶がある。事なきを得て、化粧ポーチを取り出し、無事、身支度を終えることができた。
 海外に行くときは、ダイヤルロックは要注意である。開かなくなった時のリスクは大きい。大都市ならばともかく、地方都市で深夜の到着となるとなす術もない。少なくとも、初日の仕事ができる服装で、必要な資料は手荷物というのは、それ以来の海外出張の鉄則となっている。
2.2番目の訪問地「エカテリンブルグ」
 ロシア連邦中央部、ウラル山脈中部の東側にあり、イチセ川沿いに位置する工業都市である。シベリアへの交通の要地として発展した町で、人口は約135万人、ロシアで5番目に多い大都市である。主な産業は、金属工業、機械工業、食品産業などである。1723年にピョートル1世によって建設された町であり、「エカテリンブルグ」という名前は、ピョートル1世の妻エカテリーナ1世に因んでいる。最後の皇帝、ニコライⅡ世が殺された地でもあり、また、ロシア連邦初代大統領のエリツィン氏の生誕地でもある。
●<マイナス15度での市内散策>
 サマーラから空路、エカテリンブルグへ移動。サマーラとの時差は2時間。すでに日は落ちているが、歓迎の意味で、街の中心部を案内してくださった。しかし、外は闇の世界。車ではなく徒歩だった! 外気温マイナス15度。手袋と帽子は必需品。街路灯はあるものの、薄暗い。そして道はアップダウンがあるので、足元ばかりに意識が集中して、観光どころではなかったというのが本音だ。しかし、教会前の広場での「氷像」には感動した。札幌の雪まつりのように大規模ではないが、精巧に作られた像が沢山展示されている。すべて、凍結した川の氷で作っているそうだ。教会の像もあり、中にも入れる(かまくらの教会版)。この外気温なので、町全体が冷蔵庫なのである。寒さに慣れている現地スタッフも、やっと食事の店に入ると「僕たちは、とにかく冷えているので、何でもいいから、温かい飲み物をちょうだい」と言っていた。
 翌日、セミナー終了後、明るいうちにもう一度町の中を散策した。人々が行き交う活気があり、とても美しい街の景色だった。エカテリンブルグの町の中央部を流れるイセチ川は、4月中旬ぐらいまでは凍っており、人々の抜け道となっている。
※次にエカテリンブルグへ講演にくる日本人は、鳩山喜一郎氏(鳩山由紀夫元総理の長男)で、テーマは「渋滞対策」とのことだった。
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   氷像           凍結した川の上を歩く人々
3.3番目の訪問地「トヴェリ」
 モスクワより北西に170km、ヴォルガ川に面するロシア連邦の工業都市でトヴェリ州の州都である。主な産業は、鉄道列車製造、木材加工、繊維工業、化学工業などである。日本からも建機メーカーが進出している。
●<ホテル滞在4時間、最短記録の更新!>
 エカテリンブルグからモスクワに空路で戻り、ホテルにチェックインしたのが、午前0時。時差が2時間あるため、いきなり夜中になってしまった。翌朝は陸路、トヴェリに向かうため早朝4時にホテルを出発。ホテル滞在4時間という、最短記録を更新した。かなりの強行軍だったため車中はひたすら睡眠。トヴェリには、8時過ぎには到着。9時半セミナー開始。
 セミナー終了後、トヴェリ市内を車で案内していただいた。市内の渋滞はトヴェリでも一緒。前方を見ると、トロリーバスの架線がはずれ立ち往生をしていた。こうなると、乗客が降りてきてバスを押すしかないようだ。
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  凍結したヴォルガ川     イルミネーションが素敵な街中
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  トロリーバスを押す乗客
 翌朝、ロシア版新幹線「サプサン号」でモスクワ経由で帰国の途についた。
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  ロシア版新幹線「サプサン」号
4.帰路、モスクワでの「サプライズ」
  「顧客管理 ~初見の顧客をリピート客にするために~」というテーマでセミナーを行い、リッツカールトンホテルのクレドについて取り上げた。その中で全従業員がクレドを携帯していることも説明をしていた。
 3都市でのセミナーが終わり、モスクワの日本センターに挨拶に立ち寄った際、現地スタッフが、「鴨志田先生、リッツカールトンホテルに興味がありますよね。今からモスクワのリッツカールトンに行きましょう!」と言ってくれた。思いもよらないサプライズだった。そして、リッツカールトンに到着すると、彼は、フロントのスタッフのところに行き、「あなたは、クレドを持っていますか?」と尋ねたのだった。そして、私のことを日本から来た講師と紹介すると、フロントのスタッフは、その場でクレドカードをプレゼントしてくれた。私にとってはさらなる「サプライズ」の出来事だった。
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リッツカールトンホテルの     リッツカールトンホテルの  
玄関前アプローチ          ロビー
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モスクワのリッツカールトン
ホテルでいただいたクレドカード
~ おわりに ~ 「海外での自己管理」
 これまでに、何度も海外出張を経験させていただいた。たとえば、上記のようにホテルチェックインが深夜で翌朝から仕事、または、滞在中、3週間、まったく休みなしということもあったが、気力と自己管理で乗り切っている。海外の仕事では、気力と体力の自己管理は仕事の責任を果たす上で大切な要因である。海外に行ったときに私が心がけていることをご参考までに以下に記す。
(1)アイマスクと濡れマスク(乾燥対策)を着用して、休める時に体を休める
(2)アルコールは控える
(3)食事は腹7分(胃腸が弱い私は、油は極力控えている)
(4)長袖のパジャマ、腹巻、使い捨てカイロは常に携行する
(5)睡眠時間を十分にとる
 また、次の機会に、ロシア出張の続編を発信したいと思います。