はじめに
 新型コロナウイルス感染拡大により、国内の環境も大きく変化しました。
 新型コロナウイルスの被害を受けられた皆様に心よりお見舞いを申し上げます。また医療関係者やライフラインをはじめ最前線で働く皆様に、深く感謝申し上げます。
 これまで、災害や増税等で消費者の行動は変化してきましたが、今回のコロナの影響は消費にどのような影響を与えたのか、家計調査を通して、消費者の行動の変化を見ていきます。

■3月の消費行動(二人以上の世帯)
 家計調査3月の結果を見てみると、二人以上の世帯での消費支出は、物価の変動による影響を除いた実質で6.0%の減少となり、これは2015年3月以来5年ぶりの大きな落ち込みとなりました。
 消費行動の大きな影響が見られた主な品目は、下記の通りです。
 (前年比は全て実質ベース)
・食料
 米が+15%、パスタ+44%、カップ麺+16%、即席麺+31%と大きく伸長しました。3月からの全国の小中高校の臨時休校開始や、リモートワーク、外食自粛で家庭での食事機会が増加したことや、今後への不安感から買いだめ行動も行われた結果と言えます。店頭でも、これらの商品は欠品する店舗も見られ、購入制限を設ける店舗もありました。震災や豪雨などの災害の場合は、停電や断水の不安もありますが、今回ライフラインは確保されていたこともあり、家庭で調理できる食材の消費が増加しましたと言えます。また、米やパスタ、即席麺は、大人数分作る場合にも適しており、学校休校により子供の食事に頭を悩ませる家庭でも活躍したことでしょう。
 同様に、冷凍での保存がしやすく、料理に活用しやすい生鮮肉が+10%、冷凍調理食品も+22%と伸長しました。
 チューハイ・カクテルも+23%と伸長しました。一方で外食の食事代は▲30%、居酒屋での飲酒代は▲54%と大きく減少しました。飲み会は減少し、代わりに家飲みをする機会が増えたことにより、チューハイ・カクテルの購入増加となったと言えます。「Zoom飲み」といった、パソコンやスマートフォンの画面越しでの飲み会も話題となり、新しい行動が広まるきっかけとなりました。
・家具・家事用品
 トイレットペーパーは+26%と大きく伸長しました。トイレットペーパーが品薄になるのではないか、といった心理から、買いだめ行動が発生したことが増加の要因と考えられますが、このような買いだめにより、全国の店頭からトイレットペーパーが消え、話題となりました。
・被服及び履物
 洋服は▲31%、履物類は▲25%と減少しました。買い物に行く機会が減少したことに加え、外出自粛により、洋服や靴を着る機会が減少したこともあります。本来なら、春物の服を購入して外出するはずが、外出できるようになる頃には春が終わってしまい、衣料品業界は非常に厳しい状況となりました。
・保険・医療
 保健用消耗品は+18%となりました。これは、マスクやガーゼといった衛生用品の需要拡大と言えます。
 他の保険医療用品・器具は+76%と大きく伸長しました。これは、コロナウイルス感染の指標となる体温を測るための体温計の需要が拡大したためです。体温計も、マスク同様店頭での欠品も見られました。
・交通・通信
 鉄道運賃▲65%、通学定期代▲57%、航空運賃▲85%、ガソリン▲18%と大きく減少しました。学校休校やリモートワーク拡大、出張や旅行の減少により、交通費は大きく減少しました。
 3月は、3連休もあり、例年なら春の観光、花見シーズンとなりますが、今年は新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛の影響で、国内パック旅行費が▲83%、宿泊料も▲55%と減少しました。
・教育娯楽
 ゲーム機が+166%、ゲームソフト等が+157%と大きく伸長しました。休校や外出自粛中の家庭での娯楽として、ゲームをする機会も増えたといえます。インターネット接続料も+12%で、SNSや動画を視聴する機会が増えたためと考えられます。このような自宅で過ごすための楽しみとして消費が増えたものあり、これらは「巣ごもり需要」として話題となりました。
 一方で、パック旅行費▲83%、宿泊料▲55%、映画・演劇等入場料▲70%、遊園地入場・乗物代▲87%と大きく減少しました。大型娯楽施設の休園が相次ぎ、春の観光シーズンや春休みの期間に、このような観光施設は大打撃を受けたと言えます。
・その他
 乳液が▲29%、口紅が▲22%と減少しました。外出減少で、化粧をする機会が減ったことや、マスクの着用により、口紅をする必要性がなくなったと言えます。

 他にも、消費増加が話題となったものに、ホットケーキミックスがあります。お菓子作りの材料等、手作り用の商材も店頭での欠品が目立ちます。長引く自粛により、家族でゆっくり料理やお菓子作りを楽しむ行動があったと言えます。これまでは簡便・時短に着目されがちでしたが、今回の自粛により、「おうち時間」を楽しむという、新しい価値観が生まれました。
 SNSの普及により、家にいながら、それぞれの「おうち時間」を共有するといった新しい生活スタイルが広がったと言えるでしょう。

■さいごに
 このように、新型コロナウイルスの感染拡大は、生活行動に大きな影響を与えました。各業界も、大きな影響を受け、今後の対策を迫られています。これまでの日常を取り戻すためにも、一人ひとりが自分にできること考え、実践することが大切だと感じています。

※参考資料
 総務省「家計調査」
 
高橋 真紀(たかはし まき)
 中小企業診断士
 (一社)東京都中小企業診断士協会 中央支部 ビジネス創造部副部長