資金調達は経営陣の最重要業務の一つであり、場面や必要性に応じて適切な手段を選ぶことが必須となります。ここでは、資金調達の種類とその特徴を解説していきます。

・アセットファイナンス 資産を現金化する
 例)ファクタリング:売掛債権を手数料を払ってファクタリング会社に売却
 例)リースバック:固定資産をリース会社に売却し、リースする
・デットファイナンス:返済を条件とした資金調達
 例)融資:金融機関から借り入れする
 例)社債:会社の債権を発行し、金融機関等に引き受けてもらう
・エクイティファイナンス:返済義務のない資金調達
 例)出資:ベンチャーキャピタル(以下、VC)、事業会社等に
      自社株を購入してもらう

 一般的には、デットとイクイティで調達するため、本日はこの2つについて解説します。

■デットファイナンスの特徴

 デットファイナンスのおもな特徴は、
・返済義務がある
・金利などの利払いが必要
ことです。資金の出し手は、主に金融機関です。

 ここで、金融機関の視点に立ってみましょう。どんな会社に貸したいでしょうか?
 当然、ちゃんと借りた金を返すことのできる会社ですよね。では、どんな会社が返済しやすい、と考えるか、というと、「継続的に安定した利益を上げている会社」です。そのため、当たるか当たらないかわからないリスクの高い事業よりも、少なくとも確実に利益を上げられる企業の方が借りやすくなっています。また、赤字の企業は返済可能性が低い、と見られ、融資見送りになるケースもあります。
 とはいえ、赤字だから借りられない、というわけではなく、しっかりとした事業計画で収益予測がしっかり立てば十分に借入可能です。

 特に、日本政策金融公庫などの公的機関は、コロナによる売上減少への融資や創業者への融資に積極的で、金利や保証減免の措置もあるので、該当する方は、まずは日本政策金融公庫にお問合せすることをお勧めします。
 また、国や地方自治体が融資あっせんを行う「制度融資」も活用しやすいものなのです。これは都道府県によっても異なるので、一度、ご自身の事業所在地の制度を検索してもいいかもしれません。

■エクイティファイナンスの特徴

 エクイティファイナンスのおもな特徴は、
・返済義務がない
・株式の発行等で、お金の出し手の経営への関与が高まる
ことです。資金の出し手は、VC、事業会社、個人投資家など多岐にわたり、出し手のよってスタンスが変わります。

 VCは一般的に、上場などのExit時の株式売却益(キャピタルゲイン)を狙います。ただし、上場まで行く会社はかなり少数のため、複数社出資して1社上場すればよい、というスタンスを取りがちです。そのため、銀行などと異なり、「安定したヒットより場外ホームラン」を出せる会社に出資します。また、特にベンチャー企業は先々の計画が予想しづらいため、事業計画自体よりも「経営者」を見られることが多いです。
 そのため、VCなどからの出資の際は、CEOが先頭に立って交渉することが求められます。

 返済義務がなく、ベンチャーにとってはデットよりも身近なためか、出資で調達するケースが多くなっています。しかし、出資は、株式等の購入で議決権を持たれて経営の自由度が低くなるリスクがあります(対応方法はありますが)。経営陣としては、客観的な視点であらゆる可能性を検討し、最適な資金調達を選択したいものですね。

【略歴】
濱口 誠一
中央支部副支部長兼青年部長
従業員100名から2万名、社外取締役含めて6社の経営企画経験を活かし、「失敗しない事業計画」を作るための社外経営企画室長として、独立して診断士業務を行っている。