2022年4月1日、「中小企業の駆け込み寺」として、金融機関、民間専門家、各種支援機関と連携して「地域全体での収益力改善、経営改善、事業再生、再チャレンジの最大化」を追求するため、全国47都道府県に「中小企業活性化協議会」が設置されました。以下、中小企業庁サイトからの引用により、中小企業活性化協議会の支援内容を紹介します。
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/saisei/index.html

日本の企業数の99.7%、雇用の7割を占める中小企業は成長と分配の好循環のエンジンですが、コロナ禍の長期化等により、増大する債務に苦しむ状態が長く続けば、十分な人材投資、設備投資が困難となり、成長と分配の好循環が停滞するおそれがあります。
このような現状認識のもと、経済産業省は、中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジを地域全体で推進するため、2022年4月1日から、中小企業再生支援協議会と経営改善支援センターを統合し、全国47都道府県に「中小企業活性化協議会」を設置しました。

中小企業活性化協議会の全体像
協議会は、「地域全体での収益力改善、経営改善、事業再生、再チャレンジの最大化」を追求するため、①「中小企業の駆け込み寺」として、幅広く中小企業者の相談に対応し、②協議会自身においてあらゆるフェーズの中小企業者への支援と民間の支援専門家の育成を実施し(旧中小企業再生支援協議会による支援)、③各フェーズでの民間による支援を促進すべく民間の支援専門家の活用を普及啓発します(旧経営改善支援センターによる支援)。
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Ⅰ.中小企業活性化協議会自身による支援
1.収益力改善支援
(1)支援の背景
新型コロナウイルス感染症の影響により、多くの中小企業が、売上の減少や借入の増大に直面しています。こうした中小企業の皆様は、今後収益力改善に向けた取組をどのように進めていくか悩みを抱えているかと思います。本支援では、中小企業活性化協議会が、有事に移行しそうな中小企業者を対象に、収益力改善計画(収益力改善アクションプラン+簡易な収支・資金繰り計画)の作成を支援します。
(2)支援の概要
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(3)支援の対象となる中小企業
本支援は、有事に移行する恐れのある中小企業を対象としています。幅広い中小企業者を対象としており、金融機関に対しリスケジュール等の金融支援を要請しない中小企業者も支援の対象となっています。
(4)収益力改善計画について
本支援では、1年間から3年間の収益力改善計画(収益力改善計画遂行中の行動計画(収益力改善アクションプラン)+簡易な収支・資金繰り計画)を作成します。ただし、主要債権者等及び必要な対象債権者に対し、リスケジュール等の金融支援の要請を行う場合には、1年間の収益力改善計画を作成します。

2.プレ再生支援・再生支援
(1)支援の背景
収益性のある事業はあるものの、財務上の問題がある中小企業の皆様は、事業の再生に向けた取組みを進めていきたいと思う一方で、何から始めればよいのかわからず悩みを抱えている方もいらっしゃるかと思います。
本支援では、中小企業活性化協議会が、収益性のある事業はあるものの、財務上の問題がある中小企業者を対象に、事業面・財務面での改善を図る再生支援を実施します。
(2)支援の概要
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(3)支援の対象となる中小企業
本支援は、収益性のある事業はあるものの、財務上の問題がある中小企業を対象としています。中小企業活性化協議会は、中小企業者に対して、中立公正な第三者機関の立場から、助言を行い、再生計画の作成のサポートを実施します。
本支援は、中小企業活性化協議会の前身である、中小企業再生支援協議会が2003年から実施している支援であり、2003年の設立以来、約5万3千件の中小企業からの相談に対応し、約1万6千件の再生支援を実施しています。
(4)プレ再生支援・再生支援について
再生支援では、原則として以下の基準を満たした再生計画の作成を支援します。
①中小企業
・実質的に債務超過である場合は、再生計画成立後最初に到来する事業年度開始の日から5年以内を目処に実質的な債務超過を解消する。
・経常利益が赤字である場合は、再生計画成立後最初に到来する事業年度開始の日から概ね3年以内を目処に黒字に転換する。
・再生計画の終了年度(原則として実質的な債務超過を解消する年度)における有利子負債の対キャッシュフロー比率が概ね10倍以下となる。
②小規模な事業者
・再生計画成立後2事業年度目(再生計画成立年度を含まない。)から、3事業年度継続して営業キャッシュフローがプラスになること。
・相談企業が事業継続を行うことが、相談企業の経営者等の生活の確保において有益なものであること。

3.再チャレンジ支援
(1)支援の背景
収益力の改善や事業再生に取り組んでいるものの、収益力の改善や事業再生を達成することが困難で、悩みを抱えている方、廃業、そして再チャレンジを検討されている方、すでに廃業しており保証債務の整理に悩んでいる経営者等の方は、再チャレンジに向け、何から始めればよいかわからず悩みを抱えている方もいらっしゃるかと思います。
本支援では、中小企業活性化協議会が、収益力の改善や事業再生等が極めて困難な中小企業者や保証債務に悩む経営者等を対象に、再チャレンジに向けた支援を実施します。
(2)支援の概要
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(3)支援の対象となる中小企業
本支援は、収益力の改善や事業再生等が極めて困難な中小企業や保証債務に悩む経営者等を対象に、弁護士等の外部専門家の紹介や、「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」等を活用した円滑な廃業に向けてのサポート、「経営者保証に関するガイドライン」等を活用した経営者等の再スタートのための支援を実施します。
本支援は、中小企業活性化協議会の前身である、中小企業再生支援協議会が2018年から実施している支援です。
(4)再チャレンジ支援が目指すもの
再チャレンジ支援が目指す「円滑な廃業」、そして「経営者等の再スタート」に向けた支援は、
①破産手続によるよりも、中小企業の従業員等が円滑に転職できる機会が確保されていること、
②破産手続によるよりも、経営者等にとって当該地域において再度事業を行う等の再スタートが容易であること、
③破産手続によるよりも、当該中小企業の取引先の連鎖倒産を回避することができること、
④仮に、中小企業が法的整理に至ったとしても、円滑な廃業を目指したことによって、法的整理手続を活用しながら事業譲渡等により事業及び雇用を維持できる可能性が高まることから、
地域経済の発展に資する重要な取組です。
再チャレンジ支援を実施することで、地域の資産である中小企業の経営者や従業員等が再チャレンジできる環境を構築することを目指しています。

Ⅱ.民間プレーヤーを活用した支援
1.早期経営改善計画策定支援(通称:ポストコロナ持続的発展計画事業)
(1)支援事業の背景
新型コロナウイルス感染症等の影響により、多くの中小企業者等が、売上の減少や借入の増大に直面しています。資金繰りの悪化等が生じ経営に支障が生じることを予防するために、資金繰りの安定をはかりつつ、本源的な収益力の改善への取組を必要とする中小企業等を、認定経営革新等支援機関が支援します。具体的には、経営改善計画の策定を行い、策定された計画を金融機関に提出することを通じて、関係を構築し、自己の経営を見直す契機とすることによって、早期の経営改善の取組を促進します。
(2)支援事業の概要
本事業は、資金繰りの管理や自社の経営状況の把握などの基本的な経営改善に取り組む中小企業者等が、国が認定した税理士などの専門家の支援を受けて資金繰り計画やビジネスモデル俯瞰図、アクションプランといった内容の経営改善計画を策定する際、その費用の2/3を補助することで、中小企業者等の早期の経営改善を促すものです。
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2.経営改善計画策定支援(通称:405事業)
(1)支援事業の背景
新型コロナウイルス感染症等の影響により、借入金の返済負担等、財務上の問題を抱えており、自ら経営改善計画等を策定することが難しい。
そんな方に対して、認定経営革新等支援機関が中小企業等の依頼を受けて経営改善計画策定支援を行うことにより、中小企業等の経営改善・事業再生・再チャレンジを支援します。
(2)支援事業の概要
本事業は、金融支援を伴う本格的な経営改善の取組が必要な中小企業・小規模事業者を対象として、認定経営革新等支援機関が経営改善計画の策定を支援し、経営改善の取組みを促すものです。
中小企業・小規模事業者が認定経営革新等支援機関に対し負担する経営改善計画策定支援に必要となる費用の2/3(上限額は以下参照)を中小企業活性化協議会が負担します。
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さいごに
 コロナ禍以降、中小企業の資金繰りを支援する施策が継続されてきましたが、今後は、中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジを促す総合的な支援策が展開されます。
民間プレーヤーを活用した支援では、計画策定支援だけでなく、その後の「伴走支援」も重視しています。伴走支援の実施が補助金の交付要件となっており、第三者支援専門家には計画策定支援だけでなく、その後の伴走支援も求められています。

●略歴:高橋 利忠(たかはし としただ)
都市銀行に16年勤務、学習塾FC本部に15年勤務後、2021年に経営コンサルタントとして独立開業
経済産業大臣登録 中小企業診断士
認定経営革新等支援機関(ID:106611001110)
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会 中央支部総務部長