会社やお店の情報発信ツールにブログがあります。個人のブログと区別して会社ブログや企業ブログ、お店ブログと呼ばれています。
 今回は、読まれる、反応がある、集客や商談につながるなど、手応えを感じる会社ブログの書き方、題材(ネタ)の考え方を、具体的な方法を含めてお伝えします。

1.会社ブログには顧客が求めていることを書きましょう
 (1)自分が書けることではなく、顧客が求めていることを
 会社やお店のブログを書こうとすると、とにかく書くことを優先してしまい、また、ブログの題材(ネタ)も、それほど考えつくものではありませんので、とにかく書けることを見つけて書いてしまうことがよくあります。ブログに関して、読まれない、反応がないというご相談が多いのですが、これが原因のひとつです。
 大切なことは、会社ブログには「顧客が求めていることを書くこと」です。なお、ここでの「顧客」には「未来の顧客」も含めています。
 (2)自分に書けることを顧客に寄り添うイメージで
 もう少し丁寧にお伝えすると、書けることを「書いてはいけない」のではありません。書けることを「顧客が求めていることに寄せて書く」、つまり「顧客に寄り添う」というイメージで捉えてください。書けることをそのまま書くと、顧客が知りたいことと重なる部分は限定的ですが、顧客に寄り添って書くことで重なる部分は拡大します。
 (3)顧客が消費者の場合は体験できることを書きましょう
 顧客が消費者の場合は、商品やサービスそのものではなく、商品やサービスを利用する過程で「体験」できることを書きます。例えば旅行の場合は、目的地への移動や宿泊だけではなく、もてなしへの感動や旅先で目にしたものへの驚きなどの「体験」があります。商品やサービスを通じて「体験」できることを書くと、手応えのある会社ブログになるはずです。
 (4)顧客が事業者の場合は、先方の業務上の課題解決を意識して書きましょう
 顧客が事業者の場合は、御社が提供している製品やサービスの機能や仕様そのものではなく、その製品やサービスによって顧客の事業上の課題を解決できることまで踏み込んで書きます。例えば計測器を提供している場合、その性能による生産性の向上などを題材に選んで書きましょう。

2.会社ブログに顧客が求めていることを書く理由
 (1)自分が書けることではいけない理由
 インターネット上には膨大な情報があります。ですから顧客は、自分が求めている情報がどこかにあるはずだ、という姿勢で検索します。その姿勢を言い換えると「わがままでせっかち」です。ご自身が検索する場面を思い起こしていただければ納得していただけるでしょう。わがままでせっかちですから、記事を自分の求めていることと「照らし合わせて解釈する」ような手間はかけません。自分には相応しくない情報である、と瞬時に判断して次の情報を探します。ですから、会社ブログには自分が書けることではなく相手が求めていることまで踏み込んで書く必要があるのです。
 (2)消費者は体験できることを探している
 ご存知の通り、現在は商品やサービスが溢れています。消費者は商品やサービスそのものが持つ価値ではなく、それらの購買や利用を通じて得られる「体験」に価値を感じるようになりました。例えば、クルマの場合、一昔前は所有の喜びが中心でした。ところが現在では所有だけではなく、購入前の広告接触やディーラーとの対話による期待感、購入後のドライブの楽しみ、さらにアフターサービスの安心感などの一連の「体験」が価値として評価されるようになりました。先に挙げた旅行の場合も同様です。ですから消費者には「体験できること」を書くと、探しているものと合致した情報になるのです(出典1)。
 (3)事業者は業務上の課題解決策を探している
 顧客が事業者の場合は消費者と異なります。一昔前までは調達に関わる担当者は会社に出入りしている調達先の営業担当から、自社の課題解決のための情報を仕入れていました。ところがインターネットの普及とともに、調達先に会う前に必要な情報をインターネットで収集するようになりました。コロナ禍でリモート業務が広がるとこの傾向が一層強まりまり、現在ではインターネットに情報が載っていない会社には声がかからないとまで言われています。インターネット上にはさまざまな情報が溢れていますから、自社の課題解決に直接結びつかない情報は選ばれないことになります。

3.会社ブログの実践的な考え方と書き方
 (1)顧客が消費者の場合、5つの視点で考えてみる
 先に述べた「体験」には期待、感動、驚きなどの心理的・感情的な価値があります。
 心の動きに関する価値は、研究では人の五感を刺激する感覚的な価値、人の感情に訴求する情緒的な価値、人の知的欲求に訴求する知的な価値、新しい体験などの行動に訴求する行動・ライフスタイルの価値、特定の集団に所属する誇りなどの社会性の価値という5つの種類があるとされています(出典1)。この視点を利用すると会社ブログの題材は考えやすくなります。
 (2)共感できる情報も加えてみましょう
 人が持つ感覚や情緒、知的欲求などには「共感」も関わってきます。
 共感とは相手と同じ気持ちを感じることとです。研究では、共感は親しみと深いつながりがあるとされています。親しみは気持ちの距離を縮めますから来店や購買にも繋がりやすくなりますので、共感してもらえるように書くことも大事です。
 共感の種類には、相手と同じ感情を共有して同じ感情を体験する情緒的な共感(大変だったね、など)と、相手の考え方や価値観を認める認知的な共感(なるほど、そうだね)があるとされています(出典2)。
 この分け方を参考にすると、情緒的共感を促すには「商品の開発にともなう苦労ばなし」の紹介などが向いているでしょう。認知的共感には「商品を開発した目的や意図などの紹介」などの方向性が考えられます。
 (3)事業者の場合は、生産の3要素やマーケティングの4要素で考えてみる
 生産に関する課題は、品質の実現や向上、コストの削減、納期の短縮(生産の3要素)に関するものが代表的です。具体的には不良の削減、狙いの性能の達成、環境対応、材料や部品の在庫の適正化などの視点が考えられます。マーケティング(販売)に関する課題は、製品ラインナップ(品揃え)の充実、販売先の拡大、販売価格の向上、新規顧客獲得(マーケティングの4要素)に関するものが代表的です。これらの要素に結びつけて書くと、顧客に寄り添った情報になるはずです。

4.まとめ
 読まれる、反応がある、集客や商談につながるなど、手応えを感じる会社ブログの書き方、題材(ネタ)の考え方を、具体的で実践できる方法を含めてお伝えしてきました。ポイントは「顧客が求めていることに寄り添って書く」ことです。
 「理屈はわかったけど、やっぱり相手のことはよくわからない」という場合は、客観的な視点を持つ第三者として中小企業診断士への相談をぜひご検討ください。

出典
 1.田中達雄「CX(カスタマー・エクスペリエンス)戦略 顧客の心とつながる経験価値経営」東洋経済新報社、2018年
 2.山竹伸二「共感の正体」河出書房新社、2022年

(略歴)
 大谷 秀樹
 「中小企業・小規模事業者の活躍する社会こそが豊かな社会である」を理念に、売上向上などの課題を中心に経営支援に携わる。趣味は酒と料理と落語鑑賞。
 中央支部認定 実践的プロモーション研究会 代表
 ウェブサイト
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