中央支部 山岡達也

2月16日に青年部主催のワンコインセミナーが約40名の参加者を集め、中央支部事務所において盛況のうちに開催されました。
テーマは「業務の幅を広げるためのWebマーケティング基礎セミナー~診断士が押さえておくべき基礎知識と顧客獲得・活用事例~」で、講師は岡安裕一会員です。
こちらに参加しましたので内容につきレポートします。

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写真 1 セミナー講師岡安会員

岡安さんの診断士登録は2015年4月と最近ですが、2014年6月から独立し、現在は東京商工会議所の専門家登録を行われているとともに、マーケティングコンサルタントとしてご活躍されています。Webマーケティングの基礎について、お持ちのノウハウを惜しげもなく開陳していただきました。

なぜ診断士はWebマーケティングに取り組むべきなのか。岡安さんの語る理由は大きく二つありましたが、いずれも納得の理由でした。

一、診断士に対する中小企業からの相談は、集客アップや売上増加という内容が多い。Webマーケティングは少ないコストで集客アップや売上増加をもたらすことが可能なので、こうした中小企業のニーズにダイレクトに回答を示すことができる。よってWebマーケティングのスキルは身に着けておいたほうが良い。

二、士業は集客や営業にあまり時間やコストをかけるべきではない。その時間やコストは顧客に対して価値を生まないからである。よって、集客や営業を効率化していく必要があるが、Webマーケティングはそうした効率化をもたらすことができる。自身がコンサルタントとして身を立てていく上で、Webマーケティングの活用により集客や営業を効率化することは、非常に重要である。

岡安さんは独立前、会社員として働かれていたそうですが、会社員としてWebマーケティングを行われていたのは2年程度だということです。意外と経験年数は少ない印象ですが、それでも大いにご活躍されています。なぜそんなことができるのでしょうか。これについてはWebマーケティングの特性と、診断士としての強みの発揮という二点から理解することができそうです。

まずWebマーケティングの特性という面から考えると、Webマーケティングは、業務の幅が非常に広く、それぞれの専門分野はそれなりに深いため分断している状況があります。例えば中小企業向けのWebマーケティング施策を考えた時に、企業HPの立ち上げ、SNSの活用、SEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)への取り組み、インターネット広告の実施・・・等々、数多くの施策が考えられます。個々の施策について専門特化した専門家は世の中に数多くいます。しかし、Webマーケティングの本来の目標である集客アップや売上増加を達成するためには、これらの施策を適切に組み合わせたり、実施時期や実施順序を調整したりする必要がありますが、すべての分野に精通した専門家は少ないため、診断士の活躍できる場面が数多くあります。

また、診断士の強みの発揮という面では、診断士はWebの世界に縛られず色々な提案をすることができます。例えば、集客アップや売上増加の目標のためにWebマーケティング以外の手法のほうが有効であると判断されるケースにおいては、手配りチラシの配布などの提案をすることができます。しかし、Webマーケティングの専門家にはWebから離れた提案が難しいため、ここに差別化のポイントがあります。Webマーケティングはマーケティングの一つの手段にすぎず万能ではないことを良く理解し、テクノロジーに縛られずに他の手段との組み合わせを提案することができる。これこそまさに診断士の活躍の場ではないでしょうか。

さて、診断士がWebマーケティングに取り組む意義は理解できました。次は、どのように取り組んでいけばよいのか、その方法論になります。

Webマーケティングの範囲は非常に幅広く、各分野も奥深く、各分野の変化も早いため、すべての分野に精通するのは困難です。また、ITリテラシーがある程度は必要になりますし、一見するとどこから手を付けるべきかわからないという点が難しく、とっつきにくいイメージがあります。

岡安さんは、まずはWebマーケティングの全体像を把握し、その中でできれば得意分野を持つように勧めます。ITリテラシーに関しては、Webで検索したり書籍を読むだけで終わらせるのではなく、実際に手を動かして覚えることが有効です。まずは自身のWebサイトを持っていないのであれば、その構築から初めてみる。その後、SNSやメールマーケティングに取り組んでみる。そうした経験を通じて、どんな場合にどんな手段が有効なのかが皮膚感覚として理解できてきたらしめたもの、Webマーケティングをビジネスにするチャンスです。顧客の状況に応じて提案を使い分けると良いでしょう。

ただ、ここで注意が必要なのは、Webマーケティングは最初からうまくいくものではないということを、顧客に事前に説明しておくことです。例えば、施策によりWebサイトへのアクセス数やSNSの「いいね!」の数は稼げるかもしれませんが、肝心の集客アップや売上増加に即効性があるかというと、そうならないケースも多くあります。WebマーケティングはテレビCMなどに比較すると少ないコストで取り組むことができるとはいえ、失敗続きでは無駄なコストが膨らんでしまいます。ダメージを最小限にしながら、仮説検証改善のサイクルを早く回していく必要があり、この点を顧客に事前に理解しておいてもらうことが重要とのことです。

その後は、Webマーケティングの理論面からの整理として、「AIDMA」に代わる「AISAS(Attention,Interest,Search,Action,Share)」のフレームワークを提示した上で、Webマーケティングの各手法がどの段階に効果があるのかを示してもらいました。私にとってWebマーケティングの全体像の理解への大きな助けとなりましたし、参加者にとってもそうだったのではないでしょうか。

続いて、Webマーケティングの代表的手法についての各論の話があり、最後には岡安会員自身の経験を事例としていくつか話をしてもらいました。

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写真 2 セミナーに熱が入る岡安講師と熱心に聞き入る参加者

全体として非常に質が高く、またスライドの枚数が約70枚に及ぶなど、ボリュームもたっぷりで、多くの知識と気づきを得られるセミナーでした。平日夜の開催でしたが、昼間の仕事の疲れなどを忘れて引き込まれてしまいました。

岡安さんはWebマーケティングの知識やスキルの獲得に今も熱心に取り組んでおり、時々高額な有償セミナーに参加されたりしているそうです。ただその際にもマーケティングコンサルタントとして業務の幅を広げる活動は怠っておらず、なんとセミナーの講師を務めた会社をクライアントにしてしまった事例もあるとのこと。今後の岡安さんのご活躍が楽しみです。また2-3年後にでも新たな事例のお話を伺いたい、そう思いました。

以上