活動報告

専門家コラム「中小企業の採用難を解決!明日からできる5つの即効施策」(2025年9月)

「また今月も応募ゼロか…」

毎日の業務に追われる中、人手不足の解消も経営者であるあなたの肩にのしかかっています。求人広告を出しても反応がない。高い掲載料を払っても応募が来ない。「このままでは事業拡大どころか、現状維持すら難しいのでは?」と不安を感じていませんか?

私も中小企業の人材戦略策定支援に携わっていく中で、多くの経営者から同じ悩みを聞いてきました。しかし、話を聞いてみると、お金をかけずにすぐ実践できる採用施策を実施していないというケースもあります。

この記事では、中小企業だからこそ取り組める、明日から実践できる5つの採用施策をご紹介します。大手企業のように潤沢な採用予算がなくても、工夫次第で人材確保の道は開けるものです。早速、具体的な方法を見ていきましょう。

1.求人内容の見直し:「誰に向けた求人か」を明確に

「人手が足りないから誰でもいい」。忙しい毎日の中で、ついそんな気持ちになってしまうこともあるでしょう。しかし、採用活動はマーケティングと同じです。ターゲットを明確にしなければ、誰の心にも響かない求人になってしまいます。

特に正社員採用では、給与や休日といった「条件」も大事ですが、その会社で働くことでどんなキャリアが築けるのか、どんなやりがいがあるのかといった「将来性」や「働きがい」の提示が重要です。求職者は単に「仕事」を探しているのではなく、「自分の居場所」や「成長できる環境」を求めているのです。

【明日からできる改善のヒント】

(1)ターゲットを絞り込む
「20代の第二新卒」「管理職候補」「業界未経験者」など、具体的にどんな人材を求めているかを明確にしましょう。「誰でも歓迎」という表現は、実は「誰にも響かない」メッセージになりがちです。

(2)成長ややりがいを具体的に伝える
例えば「未経験からマネージャーへ昇格した社員が多数います」「地域密着でお客様と直接信頼関係を築ける環境です」といった具体的な言葉で、あなたの会社の考え方や価値観が伝わる言葉で語ると、応募者の心に届きやすくなります。

(3)応募者の不安を先回りして解消する
「残業は月10時間以内です」「入社3ヶ月は研修期間で丁寧に指導します」など、応募者が気になりそうな点を先に伝えておくことで、応募へのハードルを下げることができます。

求人票の文章は、会社の顔です。「募集しています」という事実を伝えるだけでなく、「あなたに来てほしい」というメッセージを込めて書いてみてください。

2.無料求人媒体のフル活用:お金をかけずに露出を増やす

「有料の求人媒体に掲載したけど、全然応募がこない…」

そんな悩みを抱える経営者は少なくありません。でも、お金をかける前に、無料でできる施策を使い倒していますか?意外と見落としがちですが、お金をかけずに求人情報を広く届ける方法はいくつもあるのです。

【今すぐ活用できる無料求人媒体】

(1)Indeed(インディード)の無料枠
世界最大の求人検索エンジンには無料掲載枠があります。さらに、Google検索でも表示される可能性があり、露出効果は抜群です。基本的な情報を入力するだけで掲載できますので、使ったことがない企業はここからスタートしてみてはいかがでしょうか。

(2)Googleしごと検索
Googleで「営業 求人 東京」などと検索すると上部に表示される求人情報です。自社サイトの構造を少し工夫するだけで自動的に掲載されます。技術的なハードルがあるように思えますが、最近はWordPressのプラグインなどで簡単に対応できるようになっています。

(3)ハローワーク
「古い印象がある」「面倒」というイメージがあるかもしれませんが、実は真剣に仕事を探している層が多く集まっています。特に地域密着型のビジネスや、特定の資格保有者を求める場合には効果的です。書類作成や窓口での手続きなど手間はかかりますが、費用対効果は非常に高いといえるでしょう。

あるクリーニング店では、有料求人サイトで掲載料を払っても応募がなかったところ、久しぶりにハローワークを活用したら2週間で3名の応募があり、うち1名を採用できたというケースもあります。まずは無料でできることから、できるだけ多くの接点を作ることが重要です。

3.従業員からの紹介を促す:身近な信頼を活かす採用(リファラル採用/社員紹介キャンペーン)

「うちの会社、実は隠れた魅力がたくさんあるんだけどな…」
そう思っても、それを外に伝えるのは難しいですよね。そこで頼りになるのが、いま働いている従業員です。従業員の「知り合い」を採る仕組み=いわゆる「リファラル採用」は、ミスマッチが少なく定着もしやすい有効な方法です。ここではすぐに始められる具体策を紹介します。

【明日から始められる従業員紹介施策(社員紹介キャンペーン)】

(1)インセンティブを設定する
紹介者と被紹介者の双方に明確な特典を用意しましょう。例:「採用確定で紹介者に●万円」「入社6か月経過で追加■万円」など。金銭以外に「特別休暇」「社内表彰」「ランチ招待」なども効果的です。

(2)率直に協力をお願いする
経営者や上司が直接、正直に呼びかけることが重要です。例えば「今、人手が足りなくて困っています。もし良い人がいたら紹介してほしい」と社内で伝えるだけで、協力の輪が広がります。本音で頼むと従業員の行動につながります。

(3)紹介しやすい環境を整える
紹介用のチラシや名刺サイズのカード、社内SNSテンプレ、メール文面を用意して渡しやすくしましょう。また「今月は紹介強化月間」のリマインドを定期的に出すと紹介数が増えます。紹介ルール(報奨の支払タイミングや条件)も明確にしておく必要があります。

なぜ効果的か?
従業員経由の応募は「紹介者の信頼」が前提になります。「この会社なら安心」と伝えられるため、入社後の定着率が高くトラブルが少ないというメリットがあります。企業規模に関わらず、まずは小さな紹介キャンペーンから試してみてください。

4.自社WEBサイトでの告知:会社を知ってもらう場を活かす

実は多くの求職者は、求人広告で見つけた企業に関して、応募前に「会社名で検索して公式サイトを確認する」という行動をとります。しかし、中小企業の中には採用ページがなかったり、情報が古いままだったりするケースが少なくありません。

これは大きな機会損失です。興味を持った人が情報を得られず、応募に至らないというもったいない状況を生んでいます。

【自社サイトですぐにできる採用対策】

(1)採用専用ページを作る
最低限、以下の内容を盛り込んだ採用ページを作りましょう:

・現在募集中の職種と詳細な募集要項
・職場の雰囲気が伝わる写真や動画(社員の笑顔や、実際の仕事風景など)
・明確な問い合わせ、応募の導線(フォーム、メール、LINEなど)
情報がしっかりとあるだけで「きちんとした会社だ」「安心して応募できる」と思ってもらえます。

(2)社員インタビューを掲載する
「この会社で働くとどんな感じなんだろう?」という疑問に答えるため、実際に働いている社員の声を掲載しましょう。特に、応募者と似た経歴の社員(例:未経験から入社した人、子育てしながら働いている人など)の体験談は、非常に説得力があります。

(3)採用情報を目立つ場所に置く
サイトのトップページから一目で採用情報にアクセスできるようにしましょう。「求人情報」「採用情報」「一緒に働きませんか」などのボタンやバナーを目立つ位置に配置することで、興味を持った人が迷わず情報にたどり着けます。

「ホームページの更新は面倒…」と思うかもしれませんが、採用ページだけでも作っておくことで、求職者からの第一印象が大きく変わります。小さな工夫が大きな採用成果につながるのです。

5.店舗等での告知:スマホで応募できる仕組みが鍵

「スタッフ募集中」

店頭ポスターやレジ横、あるいはSNSやECサイトなどで求人告知を見たことありませんか?実は、顧客が見えるところに求人情報を掲示するのは、低コストでできる強力な告知媒体です。お客様が応募してきた場合は既に店や商品を理解している分、採用→長期勤務につながりやすい傾向があるからです。しかし、意外と掲示していない、出していてもそこから実際の応募につなげる導線がないことが大きな課題です。せっかく興味を持ってもらっても、その場で応募方法がわからなければ、帰宅後に忘れてしまうことがほとんどです。

重要なのは、「その場でスマホから応募できる仕組み」を作ることです。

【店舗での効果的な採用告知のポイント】

(1)QRコードの活用
募集告知には必ず応募ページに直接つながるQRコードを設置しましょう。「詳しくはこちらから」と書かれたQRコードがあれば、興味を持った人がその場で簡単に詳細を確認できます。

(2)LINE公式アカウントへの誘導
LINE公式アカウントの友達登録用QRコードを設置し、そこから採用情報を発信する方法も効果的です。LINEであれば気軽に質問もできるので、応募へのハードルが下がります。

(3)シンプルで分かりやすい文言を使う
「バイト募集/週1〜OK!詳しくはコチラ▶」など、一目で内容が分かる簡潔な文言を使いましょう。細かい条件よりも、まずは「募集している」ことと「すぐに詳細が見られる」ことを伝えることが重要です。

まとめ:今日からできること

採用難は多くの中小企業経営者が抱える共通の悩みですが、この記事でご紹介した5つの施策は、どれも「すぐに」「お金をかけずに」始められるものばかりです。

これらを一つずつ取り組むのではなく、並行して実施することで相乗効果が生まれます。「どれから始めよう」と迷うよりも、できることから今すぐ始めてみましょう。たとえ小さな一歩でも、何も変えないよりずっと大きな変化につながります。

人材採用は一朝一夕で解決する問題ではありませんが、継続的な取り組みが必ず成果を生みます。この記事が、採用に悩む経営者の皆さんの一助となれば幸いです。

【プロフィール】

若林 和哉(わかばやし かずや)

不動産業、飲食業など複数企業の経営企画を10年以上担当。全国70店舗展開する飲食店の予算策定やフランチャイズ加盟募集、社内独立制度の企画や研修講師、大手菓子メーカーと提携したアンテナショップの事業企画、ハワイアンカフェの新商品企画・原価管理システム導入などを担当して独立。補助金申請や融資などの事業計画策定支援、フランチャイズ本部構築、講師業などをメイン業務としている。日本経済新聞社主催フランチャイズショーでのセミナー講師や早稲田大学校友会支援講座講師、大手製造業や通建業の新入社員研修講師、商工会議所主催セミナー講師、などの実績がある。

経済産業大臣登録 中小企業診断士
株式会社パートナー経営企画 代表取締役
一般社団法人東京都中小企業診断士協会中央支部副支部長
一般社団法人東京都中小企業診断士協会フランチャイズ研究会幹事
士業&コンサル コンテンツマーケティング研究会&マスターコース代表
中小企業診断士稲門会常任幹事
1級販売士

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