Global Wind (グローバル・ウインド)

中央支部・国際部 藤田 泰宏

 私は2018年11月に実施された東京都中小企業診断士協会国際部主催のインドネシア海外事業調査団の一員として参加した。ここでは、インドネシアの首都があるジャカルタ訪問時に日系レストランや食品スーパーの訪問で気付いたこと等を述べてみたい(その他詳細については調査団の報告書を参照下さい)。
 ジャカルタはインドネシアの首都で現在人口が約1千2百万人、2016年の近郊を含む都市圏人口は約3千万人で、東京都市圏に次いで世界第2位、世界屈指のメガシティである。現在も人口は増え続け、東京都を追い抜くのは時間の問題と言われている。
 16世紀末よりオランダが進出しオランダ東インド会社の拠点が現在のジャカルタ(当時バタビア)に置かれ、現在でもオランダ文化の影響があちこちに残っている。東京都に匹敵する巨大都市ジャカルタにはとても一言では語れない多様性があり、僅か3日間の調査では語り尽くせない多様性に富んでいる。
 ここでは、紙面の都合上、具体的に訪問した日系レストラン、食品スーパー訪問の感想等を以下の通り述べてみたい。

1. 日本食レストラン炎丸の訪問:
 調査団は2018年11月20日夕方ジャカルタに到着後、日本人が経営する日本食レストラン炎丸を訪問し夕食を取った。店長は日本人一人だが、現地人は44人、内半数は調理場で働いていた。我々が食べたメニューは、炙り鮭ワサビマヨネーズトースト、和牛一口焼きおにぎり、温泉卵とカラスミ蕎麦、炙りマグロとクリームチーズサラダ、銀ダラの西京焼き、等で、純日本食では無く現地の嗜好に合わせて創作され全て火が通っていた。熱帯のジャカルタでは生の魚介類を食べる習慣がないためと思われる。

01_日本食レストラン 02_日本食レストラン入口

訪問したジャカルタの日本食レストランの入り口

 アルコール類は、インドネシア人口の約9割がイスラム教徒であることもあり、公の場では基本的に飲酒は禁止であり、我々のような外国人向けのレストランでもビール以外の品揃えは乏しい。また、酒類の専門店でも多額の輸入関税が課せられているため、価格は日本で買うよりも高い。
 訪問した日本食レストランで日本酒を飲むことができたが、ラベルを見るとベトナム産となっていた。ベトナムで生産された日本酒が輸入されたものと思われる。その店ではウイスキーは無かったがインドネシア産のラム酒を飲むことができた。ラム酒は砂糖キビを原材料とするので、インドネシア国内で入手したと考えられる。
 日本から輸入している食材は、コストがかかり手続きが煩雑であることもあり、食材の一部に過ぎない。牛肉もオーストラリア産のWAGYUである(因みにWAGYUブランドはオーストラリアで商標登録され、海外市場を席巻している)。また、現状の我国では多くの食材や農産物を輸入に頼っている。国内産よりも安いからだ。そうしたものが、直接海外の生産地から消費国に流れることは不思議ではない。
 訪問先の炎丸はジャカルタの一等地(東京都丸の内のような所)の高層ビルに入っており、内装も豪華。地元の富裕層と思われる客で埋まっていた。
03_レストラン顧客

レストラン店内で飲食する現地人の顧客

2. 日系食品スーパーの訪問:
 ジャカルタ中心市街地より南西の郊外に広がるBSDシティー(開発途上の巨大なスマートシティー)および同シティー内のショッピングセンターを訪問した。BSDシティーは6000ヘクタールの広大なもので、華人系インドネシア財閥が推進している不動産開発が現在も進行中である。シティー全体をデジタル化する人工的な未来都市である。
 地域内に進出しているショッピングモール内のイオンの食品売り場では、価格は開発中のスマートシティーの中にあるためか、日本レベルで高い。しかし、持ち帰り寿司から豆腐売り場まで何でもある。04_ショッピングモール
 通常日本から輸出される食材は現地では運賃や保険料、手数料、関税、保管料、廃棄ロス等が積み重なり日本の価格の数倍になる。価格レベルを見るとそれほどでもなかったので、現地か近隣アジア諸国からの調達が太宗を占めると思われる。日本からの輸出品の種類と割合を知りたかったが時間切れとなった。

05_店内陳列  06_持ち帰り寿司

    店内の陳列、うどん、こんにゃく等    店内の陳列、持ち帰り寿司コーナー

 品揃えは、多岐にわたり、殆ど日本の食品スーパーと変わらない。豆腐は健康食品として海外でも知られているためか、豆腐だけのコーナーを設け、様々な種類の豆腐が陳列されていた。米も「こしひかり」と表示されたものが販売されていたが、原産地の表示は確認できなかった。
 フルーツや魚介類は熱帯産の現地のものが豊富に陳列されていたが、リンゴや鮭など熱帯では採れないものの品揃えもあった。
07_豆腐売場

店内の豆腐売り場コーナー

3. 所感
 想像以上にジャカルタはエネルギッシュで懐の深い街であり、よりよく理解するためには私自身勉強不足で歴史的背景の知識や地政学的な知見がもっと必要だと感じた。今後人口減少とともに衰退が見えている我国にとって目先インドネシア等の外国人労働者の受け入れが考えられる。こうした交流にともない日本食へのニーズも更に高まることが予想される。こうした中、日本政府は食品・農林水産物の輸出拡大戦略を推進している。
 しかし、インドネシアでは、既に戦前から欧米の外資系食品メーカーが進出し、市場を席巻している。また、現地や近隣アジア諸国でも日本食材の生産が可能なものもあり、日本からの輸出品と競合する。
 日本からの輸出で勝ち目のあるものは、希少性がありブランド化されたものだと考えられる。また、安定供給も重要なポイントで、個別の企業がバラバラと輸出を図っても勝ち目は少なく、国を挙げての連合軍として戦う必要があるように感じた。

以上

藤田 泰宏
FMC
フジタ・マネジメント・コンサルティング 代表
中小企業診断士
東京都中小企業診断士協会 中央支部国際部 
JETRO新輸出大国コンソーシアム・エキスパート
株式会社ワールド・ビジネス・アソシエイツ チーフ・コンサルタント