みなさんの会社では、テレワークを取り入れていますか?働き方改革の様々な取り組みが各企業で始まっているのは、みなさんも実感されていることと思います。働き方改革関連法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)の施行が契機になっているようです。各社、時間外労働の削減や有給休暇の取得、仕事と生活の両立に向けての施策を講じています。企業によって取り組むことは違っていますが、その手段として、テレワークを取り入れる企業が増えてきています。東京都産業労働局「多様な働き方に関する実態調査<テレワーク>(平成31年3月)」によると東京都内企業(従業員30人以上)でのテレワークの導入状況は、19.2%です。

東京オリンピック・パラリンピックを契機に

東京都では、オリンピック・パラリンピックの時期にテレワークをすることを、企業に勧めています。2012年のオリンピック・パラリンピックロンドン大会では、市内の企業の約8割がテレワークを実施して交通混雑緩和に効果があったことからです。
今年の東京2020大会でも、国内外から多くの人々が集まり、首都圏の公共交通機関における混雑が予想されています。大会期間中の交通混雑緩和に効果的な働き方として、東京都はテレワークを交通需要マネジメント(TDM)や時差BIZなどの取り組みと合わせて「スムーズビズ」として一体的に推進しています。またこれをきっかけに働き方として定着させることを目標としています。東京の成長の鍵となる生産性の向上や多様な人材の活躍等の効果が期待できると考えているからです。

テレワークの3つの形態

テレワークとは、インターネット等のITC(情報通信技術)を活用することにより、自宅や外出先等で仕事をするなどの場所にとらわれない柔軟な働き方です。テレ(Tele)は離れたところで、ワーク(Work)は働くということです。

具体的にテレワークは、3つの形態があります。在宅勤務、モバイルワーク、サテライトオフィスオフィス利用があります。
在宅勤務は、自宅を就業場所とする勤務形態。通常週に半日や1日が多いようです。通勤負担が軽減され、時間を有効に活用できる。BCP対策としても有効です。
モバイルワークは、外出先、移動中やカフェなどを就業場所とする働き方です。わざわざオフィスに戻って仕事をする必要がなくなるので、移動の時間が不要になり、移動時間を有効に活用することができます。
サテライトオフィスの利用は、所属するオフィス以外の遠隔勤務用の施設を就業場所とする働き方です。職住近郊の環境を確保することができると通勤時間も削減できます。

テレワークのメリット・デメリット

テレワークのメリットを考えてみましょう。企業のメリットは、業務改善などの経営改革に結びつく事、働き方改革に取り組む会社として優秀な人材の確保ができる事、事業継続性の確保(BCP対策)に結びつく事です。
東京都産業労働局「多様な働き方に関する実態調査<テレワーク>(平成31年3月)」よると従業員にとってテレワーク導入の効果は、在宅・サテライトオフィス勤務では通勤時間の削減、業務への集中力向上。モバイル勤務では、生産性の向上と通勤時間の削減との回答が多いです。
従業員のメリットは、ライフ・ワーク・バランスの実現、通勤時間の削減分の時間有効利用、育児・介護中の仕事の継続、業務効率の向上があるといえます。社会的にもメリットがあります。女性・高齢者・障害者活躍による労働力人口減少の影響緩和や雇用創出、環境負荷の軽減が考えられます。
テレワークのデメリットとして考えられるのは、時間管理、勤怠管理がしづらい、コミュニケーションが取りづらいなどが考えられます。これは、企業側、従業員側双方の懸念としてありますので、勤怠管理やコミュニケーションツールの利用などの工夫が必要となります。

テレワークの導入手順

テレワーク導入には、最初にどの仕事をテレワークでするかを決めなければなりません。そのために、業務の洗い出し、業務の見直しをすることになります。テレワークのためには、ペーパーレスということも重要になってきます。資料が紙のみで作られ保管されている場合、オフィスでしか仕事ができないからです。
総務省の「ITC利活用と社会的課題解決に関する調査研究(2017年)」によると、社外から自社のシステムにアクセスして行える業務では、「電子メールの確認、送信」 が 54.4%でもっとも多く、ついで「スケジュール確認、日報作成・閲覧等」が 19.5%でした。また、「社外からアクセスして行える業務はない」という企業は 39.4%でした。テレワーク導入を進めることは、社外から自社システムにアクセスして行える業務を整備していくことにもつながります。

社外から自社のシステムにアクセスして行える業務(複数回答) (n=3,266)

202001_グラフ_小暮先生出典: 総務省「ITC利活用と社会的課題解決に関する調査研究(2017年)」より作成

 次に働き方についてルール、制度を決めておくことが必要です。テレワーク利用の対象は、全社員か育児、介護などの理由があるものに限るのか、どんな時にテレワークをするのか、その時の申請方法はどうするか、業務の開始や終了報告の方法などをルール化します。テレワークは、所属長のもとで仕事をするわけではないので、様子が見えないためです。社員が外出先のどこでいつ出退勤したかを正確につかめる勤怠管理ツールは、在宅勤務やモバイル勤務のテレワークにも利用できます。
その他、セキュリティやICTシステムによる環境整備、その場にいないことに関する社内における意識改革も必要になります。

この夏にトライアルからはじめてみよう

テレワークを導入した中小企業のきっかけは、会社に来られなくなる人が現れて困ったからということがあります。従業員が介護で田舎へ帰らなくてはならなくなったとか、配偶者の転勤にあわせて引っ越しが決まり、他県へ行く、または通勤が長くなりすぎて通いきれないなどといったことです。
多くの会社が、全社員対象に制度をすべて整えてから導入するのではなく、トライアルからはじめています。最初は数名でスタートして、そこで出た課題や意見をもとに機器や運用ルールを見直し、本格導入に反映させてはどうでしょうか?まずは、やってみることが大切のようです。
テレワークによって業務の見直しを行うことができ、業務改革や生産性向上に結びつきます。「うちはテレワークなんてできないよ」「そんな仕事はない」と思い込まず、東京オリンピック・パラリンピックをきっかけに、トライアルとして今年の夏にテレワークをやってみませんか。東京オリンピック・パラリンピック終了後も継続利用したいという声がでてくるかもしれません。
東京都では、テレワーク推進のために国とともに「東京テレワーク推進センター」という組織を作り、支援をしています。また、私たち中小企業診断士も支援しています。ご相談してみてはいかがでしょうか?

参考資料
東京都産業労働局発行 「都内企業に学ぶテレワーク実践事例集 2018年度テレワークの活用促進に向けたモデル実証事業」
総務省HP、厚生労働省HP

◆小暮 美喜(こぐれ みき)
中小企業診断士
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会 中央支部 執行委員/研究会部 副部長