1.様変わりしたB to Bの営業活動
 新型コロナウィルス感染症の拡大(以下コロナ禍)に伴い、B to B(対事業者販売)において、これまでの営業活動の中心であった「面談」がかなわなくなり、営業機会が減少しました。
 B to C(対消費者販売)ではオンライン販売がかなり進んでいますが、B to Bの営業では、営業担当が発注者(先方の担当者)と面談を繰り返して商談を進めるスタイルが根強く残っていました。しかし、感染防止対策でリモートワーク(在宅勤務)が進み、面談に出向いても「先方に会えない」ことが増えました。その結果、受注者側では、非対面での営業活動すなわち「オンライン販路開拓」が求められるようになったのです。
 現在では、コロナ禍初期のように「全く会えない」ことはなくなったようですが、コロナ禍前から、発注者が面談段階前に技術情報をオンライン検索で収集する傾向は強まっていましたし、コロナ収束後も大手を中心にリモートワークが継続される流れがあるので、今後も「オンライン販路開拓」へのシフトは確実に求められると言えます。

2.B to Bのオンライン販路開拓の全体像
 さて、オンライン販路開拓のご相談をうけていると「いろいろなツールがあるので何から手をつけていいのか、どこまで対応すればいいのかわからない」という声が数多くあがります。確かにホームページ、ブログ、ホワイトペーパー、メールマガジンなど、様々なツールがありますのでお悩みはごもっともです。そこで先ず「オンライン販路開拓の全体像」を確認することにします。
 従来の販路開拓モデルは、たとえば展示会などで見込み顧客に接触し、後日営業担当が訪問して面談を重ねながら商談につなげるというものでした。ところが、コロナ禍により展示会や面談などの対人接触を避ける必要がでてきました。この対人接触の部分をホームページやウェブ会議などのオンラインツールで置き換えた営業モデルが「オンライン販路開拓モデル」です。
 この「オンライン販路開拓モデル」に各ツールを当てはめていくと整理しやすくなります。具体的には、発注者の「検索」「情報収集」に対応するために検索連動型広告やSEO対策、ホームページ(ランディングページ*)、ブログなどがあります。資料請求をしてもらうために用意する資料がホワイトペーパー、資料請求で取得したメールアドレスなどの顧客情報を活用して継続的にコミュニケーションを図るツールがメールマガジン、商談まで進んだ場合はオンライン会議を使います。
*ランディングページとは、ホームページの中で検索者が最初にたどり着くページを意味します。意図的に位置づける必要があり、会社のホームページの外に設置することもあります。

 このように整理したうえで、自社に必要なツールを検討していくとよいでしょう。その際に大切なことは検索から商談までの一連の流れを意識して導線を考えることです。まずは特定のお客さんを思い描いてみると考えやすくなります。

(図)コロナ禍前後の販路開拓モデルと、各種ツールの位置づけ
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3.オンライン販路開拓のメリットとデメリット
 さて、オンライン販路開拓の必要性は理解できていても、なかなか踏み切れない、うまくいかないという声をよく耳にします。確かに、素材の質感や色、ディテールなどはリアルに比べて伝わりにくいことは確かですし、ビデオ会議ではお互いの感情がうまく読み取れない側面もあります。これらはオンライン販路開拓のデメリットです。
 一方で、オンラインでは24時間365日情報を発信することができます。しかも発注者側から情報を収集しに来てくれるのです。つまり人手がいない中小企業でも、効率的な販路開拓を行える可能性が高くなります。
 また、オンラインではホームページへの訪問者数や資料のダウンロード数が明確にわかりますのでホームページや広告への投資効果を容易に把握できます。また、検索連動型広告などは比較的少額から投資が可能です。予算に限りがある中小企業でも、自社に見合った投資を定期的、継続的に行うことができます。
 更に、オンラインでは地理的な制約がありませんので営業が訪問できなかった遠方とも商談が可能になります。ニッチな製品に磨きをかけてきた中小企業は、まとまった発注量を見込むことができるようになるのです。
 このように、中小企業がこれまでに抱えてきた制約が外れるメリットもありますので、デメリットを工夫や努力で乗り越えて、是非メリットを享受していただきたいと思います。

【プロフィール】
大谷 秀樹
株式会社大谷秀樹事務所 代表取締役
中小企業診断士 認定経営革新等支援機関
プロモーション・プランナー
大学で広告を学んだ後、広告代理店においてマーケッター、プランナーとして24年間従事。中小企業診断士登録後「中小企業・小規模事業者の活躍する社会こそが豊かな社会である」との想いから2012年に独立。2016年法人設立。売上向上などの課題を中心に経営支援に携わる。東京都中小企業診断士協会中央支部認定研究会「スモールビジネスのための実践的プロモーション研究会」代表幹事 東京都中小企業振興公社オンライン販路開拓アドバイザーhttps://otanihideki.com (株式会社大谷秀樹事務所)