DX(デジタルトランスフォーメーション)とは何でしょうか?
 2018年に経済産業省は、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」と定義しました。
 そして2022年4月に経済産業省は、DXの推進に取り組む中堅・中小企業等の経営者や、これらの企業を支援する機関が活用することを想定したDXの推進のための「中堅・中小企業等向け『デジタルガバナンス・コード』実践の手引き」を取りまとめ、現在はver2.0に改訂されています。

 前置きが長くなりましたが、こうした背景には、DXが案内する側や受け手側により解釈が異なってしまったのではないかと考えます。そうした点が随所に記載されています。
 以下は、手引き(概要版)を抜粋したものです。「そもそもDXって何だっけ?」という記載があります。そこでは、DXを「データやデジタル技術等を使って、顧客目線で新しい価値を創出していくこと。」であり、「単にデジタル技術やITツールを導入すること」ではないと、○×でわかりやすく案内されています。
 「何を今さら当たり前の話でしょ!」と思う方もいれば、「そうなの?」と感じる方もいるのかもしれません。
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経済産業省ホームページ
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-chushoguidebook/contents.html
「中堅・中小企業等向け『デジタルガバナンス・コード』実践の手引き2.0」手引き(概要版)2ページ

 そして、手引き(本体)では、以下のように表現されています。

・・・省略(15行目より)・・・
つまり、DXとは、顧客視点で新たな価値を創出していくために、ビジネスモデルや企業文化の変革に取り組むことですが、そのためには、はじめに経営者が自社の理念やパーパス(存在意義)を明確にした上で、実現したい未来=経営ビジョン(5年後 10年後にどんな会社になっていたいか)をしっかりと描き、その実現に向けて関係者を巻き込みながら、現在の状況と目指すべき状況の差を埋めるために解決すべき課題を整理し、デジタル技術を活用しながらこれらの課題解決を通じて、ビジネスモデルや組織・企業文化等の変革に戦略的に取り組んでいくことが求められます。

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経済産業省ホームページ
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-chushoguidebook/contents.html
「中堅・中小企業等向け『デジタルガバナンス・コード』実践の手引き2.0」手引き(本体)2ページ

 このコラムでは、DXとは、「データやデジタル技術等を使って、顧客目線で新しい価値を創出していくこと。」について、ビジネスモデルや企業・組織の変革について考えてみます。

ビジネスモデルの変革
 DXは従来のビジネスモデルを再考し、デジタルテクノロジーを最大限に活用して新しい価値を創出することを要求します。単に製品やサービスをデジタル化するだけでなく、ビジネスそのものをデジタルに進化させるのです。顧客との直接的な接点を増やし、ビジネスの可能性を広げるオンライン販売の主流化、そしてデータ分析を活用した市場のニーズの把握とターゲット顧客へのマーケティング戦略の策定は、デジタル技術を活用した新しいビジネスモデルの一例です。

企業文化の変革
 DXを成功させるためには、企業文化の変革が必要です。テクノロジーへの恐怖心を払拭し、デジタルマインドセットを組織全体に育てることが重要です。この過程では、経営陣がリーダーシップを発揮し、DXのビジョンを明確に示し、その理解と受け入れを促す役割が求められます。失敗を恐れずに新しい試みを行い、学びを共有する組織風土の醸成が、デジタル化の道筋となります。

デザイン経営
 デザイン経営とは何でしょうか。これはデザイン思考を経営全体に取り入れ、ユーザーの視点から問題解決を行い、新たな価値創出を追求する考え方です。新しいサービスやプロセスを考え出す際、顧客の実際の体験やニーズを中心に置くことで、デジタル技術を活用した新たな価値を生み出す上で役立ちます。一見、DXとは何ら関係のないように思われるのかもしれませんが、この考え方をキッカケに、多くの企業がビジネスモデルや企業文化の変革を実現しています。

 以下に、経営をデザインするためのツール(経営デザインシート)やその活用事例等を紹介するページを案内しますので、ご活用ください。
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参考)首相官邸 「経営をデザインする」
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keiei_design/index.html

 以上が、DXの重要な要素であり、中小企業経営者、さらには支援する側が理解しなければなりません。DXは一時的なプロジェクトや単なるテクノロジーの導入ではありません。組織全体の成長と進化に貢献する持続的な変革をもたらすものです。柔軟な中小企業こそ、適切な理解とアプローチをもって進めれば、大きな成果を上げることが可能です。
 ただし、DXの旅は決して容易なものではありませんが、その先には新たな価値創出と競争力強化が見えています。挑戦を続け、試行錯誤を恐れず、一歩一歩前進していきましょう。

筆者略歴
 吉野 太佳子(ヨシノタカコ)
 中小企業診断士、経営学修士(MBA)、上級ウェブ解析士
 専門分野:デジタルマーケティング・Webブランディング・デザイン経営
 株式会社アイコンテンツ 代表取締役
 株式会社アイクラウド 取締役