【デジタル時代のビジネス戦略~ノーコードツールの威力~】
 現代のビジネス環境は、デジタル技術の急速な進化によって、絶えず変化し続けています。このデジタル時代において、企業は常に効率的かつ柔軟な戦略を求められています。とくに中小企業にとって、リソースの制約の中で競争力を維持し、成長を続けるためには、デジタルツールの活用が鍵となります。
 ここで注目されているのが「ノーコードツール」です。プログラミングスキルがなくても利用できるこれらのツールは、デジタル化の壁を低くし、ビジネスの柔軟性と効率を大幅に向上させる可能性を秘めています。このコラムでは、ノーコードツールがビジネスにもたらす革新的な影響と、最大限活用する方法を探ります。

※ ノーコードツールは日々進化し、新たなサービスが出てきているため、また特定企業への肩入れを避けるため、今回は、具体的なツール名(サービス名)を出すのは避けて紹介させていただきます。
 

【ノーコードツールが注目される背景】
 まずは、ノーコードツールが注目されている背景についてみていきましょう。

1.デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速
 現代のビジネス環境では、市場の変化に迅速に対応し、競争優位を確保するためにはビジネスプロセスのデジタル化が不可欠です。中小企業にとっても、限られたリソースの中でデジタル化を進める必要があり、ノーコードツールはその過程を加速する重要な役割を担っています。

2.IT人材不足とコスト削減
 日本はデジタル人材の絶対数が少なく、とくに中小企業においてはIT部門の構築が困難です。ノーコードツールは、専門的なプログラミングスキルがなくてもアプリケーションやシステムを開発できるため、人材不足やコスト削減の問題を解決する有効な手段となります。

3.内製化のトレンド
 デジタル化の波に乗り、多くの企業がシステム開発の内製化に注目しています。ノーコードツールを使用することで、技術者でなくてもアプリケーション開発が可能になり、外部ベンダーへの依存度を減らし、コスト削減と効率化を実現できます。

4.ビジネスプロセスの効率化
 中小企業にとって、業務プロセスの効率化は大きな課題です。ノーコードツールは業務自動化を容易にし、効率化を促進することで、従業員がより価値の高い業務に集中できるようになります。

5.変化するビジネス環境への対応
 デジタル化やリモートワークの増加など、急速に変化するビジネス環境に対応するためには、柔軟性とスピードが求められます。ノーコードツールは、ビジネス環境の変化に迅速に適応するための手段を提供します。
 

【ノーコードツールとは?】
 ノーコードツールが提供する簡易性、低コスト、迅速な開発といった特性は、特に中小企業にとって有効な解決策となりえます。ノーコードツールは、中小企業がデジタルトランスフォーメーションを推進し、競争力を維持するための重要なツールとなっていくでしょう。
 では改めて、ノーコードツールとは何なのか、メリットや類型などを踏まえて紹介します。

1.ノーコードの基本概念
 ノーコードツールとは、文字通り「コードを書かずに」アプリケーションやウェブサイトを開発できるツールのことを指します。これらのツールは、直感的なドラッグ&ドロップ操作やシンプルなインターフェースを備えており、技術者でなくても容易にデジタルソリューションを構築することが可能になります。

2.ノーコードのメリット
アクセシビリティと使いやすさ: プログラミングの専門知識がなくても使用でき、技術者でなくても簡単にアプリケーションやウェブサイトを開発することが可能。
コスト削減: 専門的な開発者を雇用する必要がなく、開発コストを削減できます。また、開発時間の短縮により、全体的なプロジェクトコストも抑えることが可能。
迅速な開発と市場投入: コーディングプロセスを必要としないため、アイデアを素早く形にし、市場投入までの時間を短縮することが可能。
柔軟性: ビジネスニーズに合わせて簡単にカスタマイズが可能であり、変化する市場条件や顧客の要求に迅速に対応できる。

 これらのメリットは、とくにリソースが限られている中小企業にとって、ビジネスのデジタル化を推進する上で大きな利点となります。

3. ノーコードの限界・デメリット
 カスタマイズの制限: ノーコードツールは柔軟性があるものの、プリセットされた機能やテンプレートに依存しているため、特定の複雑なカスタマイズや独自の機能要件を満たすことが難しい場合も。
 スケーラビリティの問題: 中小規模のプロジェクトやビジネスには適していますが、大規模なアプリケーションや高度なデータ処理を必要とする場合、機能が制限される可能性があります。
 セキュリティとコンプライアンスの課題: 特に企業内のデータや顧客情報を扱う場合、ノーコードプラットフォームが提供するセキュリティ対策やコンプライアンス基準が十分でない可能性があります。
 長期的な依存とコスト: 初期の導入は容易かつ低コストかもしれませんが、長期にわたってプラットフォームに依存すると、コストが増加する場合や、プラットフォームの変更が難しくなる可能性があります。

 これらのデメリットを理解し、適切な用途と規模でノーコードツールを選択することが重要です。ノーコードツールは多くの便利さを提供しますが、複雑なカスタマイズや特殊な機能が必要な場合は限界があります。高度なプログラミングが必要なケースでは、従来の開発手法の方が適切な可能性が高いです。

4.ノーコードツールの類型
 ノーコードツールは、ウェブサイトの作成、業務アプリの開発、データベースの管理、ECサイトの構築など、さまざまな用途で活用されています。

(1)ウェブサイトビルダー
特徴: ウェブサイトやランディングページを簡単に作成できるツール。
用途: 企業の公式サイトやプロモーションページの構築。

(2)ECサイトビルダー
特徴: オンラインストアの構築と運営をサポートするツール。
用途: 商品のオンライン販売、在庫管理、注文処理。

(3)ビジネスプロセス自動化ツール
特徴: 業務プロセスを自動化し、効率化を図るツール。
用途: さまざまなアプリケーション間のデータ連携、自動化。

(4)アプリケーションビルダー
特徴: カスタムウェブアプリやモバイルアプリの開発ツール。
用途: カスタムアプリケーションの開発、ビジネスのデジタル化。

(5)データベース管理ツール
特徴: データベースの作成と管理を容易にするツール。
用途: データの収集、管理、分析。

(6)コンテンツ管理システム (CMS)
特徴: ウェブコンテンツの管理と公開をサポートするツール。
用途: ブログやニュースサイトの管理、コンテンツの更新。

(7)デザインツール
特徴: グラフィックデザインやUIデザインを容易にするツール。
用途: マーケティング資料、ソーシャルメディア投稿、ウェブグラフィックの作成。

それぞれのツールを選択する際には、自社のニーズや目的に合わせて最適なものを選ぶことが重要です。
 

【ノーコードツールの活用例】
 では、実際のどのように活用していけばよいのか、新しいお店をオープンするつもりでそれぞれのツールをどのように活用するのか考えてみましょう。

1. マーケットリサーチ
 マーケットリサーチでは、潜在顧客のニーズや市場の傾向を理解することが重要です。たとえば以下のようなノーコードツールの活用が考えられます。

・アンケートとフィードバックツール
 アンケートフォームが簡単に作成できるノーコードツールを使用して、ターゲット市場の顧客から直接フィードバックを収集します。これらのツールはカスタマイズ可能なテンプレートを提供し、複数の質問形式(選択式、記述式など)を組み合わせることができます。

・データ分析ツール
 収集したデータを分析するためには、ノーコードデータ分析ツールが有効です。これらのツールは視覚的なダッシュボードを通じて、調査結果を分析し、洞察を抽出するのに役立ちます。公的な統計データなどを取り込んで分析することも有効な手段となりえます。例えば、jSTAT MAP(地図で見る統計)などを取り込んで分析することは出店候補地の選定に活用できるでしょう。

2.ブランディングとウェブサイトの構築
店舗や商品のアイデア出しには、ノーコードツールとはいえませんが、チャットボットなどの自然言語処理の生成AIを壁打ち相手に活用するのも良いと思います。ご自身では思いもよらないアイデア出しをしてくれることでしょう。ノーコードツールとしては以下のようなツールの活用が考えられます。

・ウェブサイトビルダー
 店舗や商品のブランディングが固まったら、ウェブサイトの制作に移ります。ノーコードのウェブサイトビルダーを活用して、店舗のウェブサイトやオンラインストアを構築します。これらのツールはカスタマイズ可能なテンプレートを提供し、初心者でも簡単に魅力的なサイトを作成できます。

・オンライン販売と決済システム
 ECサイトを構築する場合は、ノーコードECプラットフォームが最適です。これらのツールは、商品の展示からカート機能、決済システムまで、オンラインでの販売に必要なすべてを提供します。

3.マーケティングと顧客管理
 店舗の運営が始まったら、顧客のデータを管理し、マーケティング活動を行います。

・データベースツール
 顧客の情報を簡単に整理・管理できます。例えば、顧客の基本情報、購入履歴、好み、フィードバックなどのデータを一元的に記録し、各種フィルターやソート機能を使って必要な情報を素早く抽出できます。また、これらのデータを基に顧客ごとのカスタマイズされたコミュニケーション戦略を立てることが可能です。

・ビジネスプロセス自動化ツール
 メールマーケティングツールを使って、定期的なニュースレター、プロモーション、イベントの案内などを送信します。これらのツールは、メールのデザイン、送信スケジュールの管理、開封率やクリック率などの分析機能も備えています。また、業務効率化ツールを用いることで、さまざまなアプリケーション間のデータ連携と自動化を行うことができます。例えば、新しい顧客が登録された際に自動的にメーリングリストに追加する、または特定の行動をトリガーにしてメールを送信するなどの自動化が可能です。

・コンテンツカレンダーの管理
 カレンダーアプリと連動させて、SNSの投稿スケジュールを計画・管理します。これにより、定期的かつ効果的なSNSの運用が可能になります。

4.社内コミュニケーション
 ビジネスが軌道に乗り、社内体制も整ってくると社内コミュニケーションも重要になります。

・プロジェクト管理ツール
 ノーコードプロジェクト管理ツールを使って、新規プロジェクトの開発プロセスを整理し、チームメンバー間のコミュニケーションを効率化します。メッセージングアプリと連動して、チーム内のコミュニケーションを促進します。

 このようにノーコードツールや連動できるアプリケーション、あるいは生成AIなども活用して、費用負担少なく、効率的にビジネスを推進していくことが可能になってきました。
 ビジネスが成長するにつれて、新しい機能やサービスの追加が必要になるかもしれません。ノーコードツールは、迅速かつ柔軟にこれらの変更を実現できます。ただし、ノーコードツールは複雑なカスタマイズや特殊な機能には向いていない場合もあり、セキュリティやデータ移行の問題に注意する必要があります。
 

【ノーコードツールの活用と未来への展望】
 ノーコードツールは、デジタルトランスフォーメーションの加速、人材不足とコスト削減、内製化のトレンド、ビジネスプロセスの効率化、そして変化するビジネス環境への迅速な対応といった現代のビジネス課題に対して有効な解決策を提供します。
 これらのツールは、直感的な操作性と低コストで、中小企業にとってとくに魅力的な選択肢となります。しかし、カスタマイズの制限、スケーラビリティの問題、セキュリティとコンプライアンスの課題、そして長期的な依存とコストといったデメリットも認識する必要があります。
 ノーコードツールの適切な選択と活用により、企業はデジタル時代のチャレンジに対応し、持続可能な成長を遂げることができます。将来に向け、ノーコード技術の進化とともに、その活用範囲と可能性はさらに広がっていくでしょう。

 

小島慶亮
中小企業診断士
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会 中央支部 副支部長/執行委員

コンサルティングは、ビジネスモデル、戦略立案、事業計画、経営改善、人事、財務、マーケティング、webプロモーション、ブランディング、創業支援、6次化支援など。補助金申請も多数採択。講師としては、新入社員研修、管理職研修、人事採用、ハラスメント防止、ビジネスモデル、戦略立案、サービスデザイン、UX、アイデア発想、デザイン思考、プレゼン、ファシリテーション、交渉術、ロジカルシンキング、フレームワーク思考、創業塾など。DX人材の育成研修やノーコードツール活用研修の企画・運営、講師など。