新型コロナウィルス感染症の流行による緊急事態宣言でテレワークの導入が進みました。今後、新型コロナウィルス感染症の影響がなくなっても、地震、台風といった自然災害の多い日本では、事業継続性の確保(BCP対策)として取り組みが継続すると考えられます。しかしながら、テレワークを導入していない企業もまだまだあります。

(1)テレワーク実施状況
 東京都が行った「テレワーク実施率調査」によると、2023年10月では、従業員 30 人以上の企業におけるテレワークの実施状況は 44.1%の企業で「実施している」という結果でした。2020 年3月では24.0%、2020年4月では、62.7%と急速に拡大、2021年10月では55.4%、2022年10月54.1%でした。2020年に実施率入率が急上昇した後は、ほぼ横ばいに推移し、徐々に減少していますが、テレワークは、「新しい働き方」として受け止められてきましたが、今では「当たり前の働き方」へと変化してきました。

(2)テレワーク導入の目的
 テレワークを導入している企業に導入しているテレワークの目的を複数回答で聞いたところ、「非常時(新型コロナウイルス、地震等)の事業継続対策」が 93.0%と最も多く、次いで、「従業員の通勤時間、勤務中の移動時間の削減」(43.1%)、「育児中・介護中の従業員への対応」(37.1%)、「生産性の向上」(30.5%)の順になっています。(東京都「令和4年度多様な働き方に関する実態調査」)
 この中で、「従業員の通勤時間、勤務中の移動時間の削減」「育児中・介護中の従業員への対応」従業員の負担を減らすということに結び付き、より働きやすい企業となります。

(3)人手不足が企業の大きな課題
 現在、急激な少子高齢化がすすむなかで、人手不足は深刻な状況になってきています。2023年9月の日本商工会議所・東京商工会議所による「人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査」結果によると「人手不足」との回答が7割(68.0%)すべての業種で5割を超え、2015年の調査実施以降最大となっています。
 人手不足の事業への影響については、「現有人員でやりくりしている」(77.2%) 一方、「事業運営の具体的な支障が生じている」(21.6%)、「事業の拡大を見送った」(18.7%)との回答があり、既に事業に影響が出ていることが見受けられます。このようななか、テレワークの導入は、人材の定着に寄与すると考えられます。

(4)テレワーク推進のための取り組み
 今の時点で、中小企業の中には、まだ、テレワークを導入していない企業があり、そのなかには、経営者が実施することが難しい業種、職種と考え、検討もしていない企業もあると考えられます。しかしながら、そのように考えられる業種、職種であっても、個別の業務を点検すると実施できる場合があります。
 東京都では、テレワーク推進のために様々な取り組みをしています。国とともに「東京テレワーク推進センター」という組織を作り、支援をする拠点もあります。そこには、様々な業種のテレワーク導入例の情報が集まっていて、テレワークの導入が難しいとされる医療福祉や飲食サービスなどの導入例もあります。また、導入のためのツールやシステムの体験できるコーナーもあります。
 一旦導入しても、社内コミュニケーションの減少や、従業員の勤務状況の把握が難しい、セキュリティの確保が難しいといった問題が出てきている企業には、実情にあわせて専門家が相談にのる仕組みも用意されています。

 新型コロナウィルス感染症の流行という負の原因で導入が進んだテレワークではありますが、既に、テレワークは「当たり前の働き方」となっています。
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略歴
◆小暮 美喜(こぐれ みき)
中小企業診断士
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会 中央支部 研究会部部長