2019年9月の専門家コラムに「中小企業の再生支援について~第1回~」として、「中小企業再生支援協議会」について紹介をさせていただいたところ、各方面から様々な反響がありましたので、今回は第1回の続きをお伝えできればと思います。

 前回のメールマガジンで「中小企業再生支援協議会」を取り上げたきっかけとしては、2017年4月から2019年6月までの約2年に渡って、東京都中小企業再生支援協議会に出向し、サブマネージャー(統括責任者補佐)として中小企業の再生支援に携わっていたことが大きく影響しています。その中で経験したことや感じたこと等を少しでも伝えられればと思い、取り上げさせていただきました。その後、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により中小企業の再生支援をめぐる環境は激変し、「中小企業再生支援協議会」についても大きく変化をしています。第2回目となる今回は、コロナ禍における中小企業の再生支援についてお伝えできればと思います。

 前回の内容と一部重複しますが、まずは中小企業再生支援協議会について簡単に説明します。中小企業再生支援協議会は、2003年に産業活力再生特別措置法(産活法)に基づき設置され、その後産活法の改正、産業競争力強化法への移行を経て、現在まで続いている機関です。各都道府県に1か所ずつ設置されており、東京都では東京商工会議所内に設置されています。

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出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「(令和2年度)中小機構総合ハンドブック」

 2003年から17年以上に渡って同じ名称で続いていますが、支援の内容や範囲については徐々に変化してきています。当初は、上図の右中段の「事業再生支援」のみでしたが、2013年からは再生の前段階の「経営改善支援」、2017年にはさらにその前段階の「早期経営改善支援」がスタートし、2018年9月からは中小企業の経営者の再チャレンジを支援するために、上図右下段の「再チャレンジ支援」もスタートしました。
 そして、2020年4月からは、新型コロナウイルスの影響を受け、資金繰りに窮する中小企業者を支援するため、窓口相談や金融機関との調整を含めた「特例リスケジュール計画策定支援」がスタートしました。当初は1年間のみの制度となる予定でしたが、新型コロナウイルスの影響の長期化に鑑み、ポストコロナに向けた取組を後押しするため、2021年4月以降も引き続き実施されています。一方、国としては、特例リスケジュールの出口戦略に焦点が向かいつつあり、事業の視点(分析及び計画)に重点が置かれ始めている面があることから、特例リスケジュールを取り巻く環境は徐々に変化しています。

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出典:中小企業庁金融課「中小企業再生支援協議会の活動状況について~令和2年度活動状況分析~」

 特例リスケジュール計画策定支援は、新型コロナウイルスの影響によって資金繰りに悩んでいる中小企業者を対象として、取引金融機関等の支援姿勢を確認の上、中小企業者に代わり、再生支援協議会が一括して最長1年間の既存債務の元金返済猶予を要請するものです。再生支援協議会の再生専門家による助言を受けながら、資金繰り計画(特例リスケジュール計画)やポストコロナに向けた具体的な行動計画(事業継続アクションプラン)を作成できることに加え、その後の事業改善まで一貫したサポートを受けることができます。
 そのため、「急激な資金繰り悪化のために、とにかく早急に借入返済をリスケジュールしたい方」、「複数の金融機関等からの借り入れがあり、資金繰りに向け関係者間の調整が難航している方」、「資金繰りを保たせるので精一杯で、ポストコロナに向けて不安を感じている方」にとっては、検討をしてみる価値があると思います。

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出典:中小企業庁ホームページ「特例リスケ支援」チラシ

 従来の再生計画策定支援を受けるためには事業改善の見通しが必要となり、その部分がハードルになることがありましたが、特例リスケジュール計画の策定支援に当たっては、新型コロナウイルスの影響で業況が悪化したことのみが要件となっており、事業改善の見通しが立っていなくても支援を受けることが可能となっています。また、特例リスケジュール計画という名称ではありますが、リスケジュールに加えて新規融資も含めた計画を策定することもでき、実際に1年間の返済猶予と新規融資を両立できた事例も紹介されています。
 リスケジュールをするかどうか、リスケジュール計画を策定する必要があるかについては、緊急融資の有無、追加融資の可否、現状のリスケジュール状況などを基に判断をしていくことが原則(濱田法男著「コロナ禍で概念が変わった リスケを活用した企業再生支援」第1章参照)になりますが、新型コロナウイルスの影響の長期化によって、より判断が難しくなっていくことが想定されます。すでに資金繰りへの影響が出ている方はもちろん、経営を行う中で少しでも気になることがある方は、まずは「中小企業再生支援協議会」に相談をしてみることをおすすめします。

 今回は、第2回目ということで特例リスケジュール計画を中心に「コロナ禍の中小企業再生」について説明しました。第3回目以降は、中小企業再生の手法や手続きなど、より具体的な内容をお伝えできればと思います。

【東京都中小企業再生支援協議会】
 〒100-0005東京都千代田区丸の内3-2-2 丸の内二重橋ビル4階
 電話番号:03-3283-7425
 FAX番号:03-3283-7429
 https://www.tokyo-cci.or.jp/regene/

【参考書籍】
 濱田 法男「コロナ禍で概念が変わった リスケを活用した企業再生支援」(税務経理協会)

【略歴】
 加藤 匠(かとう たくみ)
 中小企業診断士・税理士
 東京都中小企業診断士協会 中央支部 執行委員