Global Wind (グローバル・ウインド)
復興を目指すコートジボアール

中央支部・国際部 六角 一雄

( はじめに )
 今年の4月1日より、国際協力機構(JICA)の技術協力プロジェクトでコートジボワールのアビジャンに投資促進政策アドバイザーとして赴任している。現地の投資促進公社に対して、外国企業をどのように誘致していくのか、どのようにビジネス環境整備を行っていくか等のアドバイスを行い、投資促進に係るノウハウの移転に努めている。
 今回西アフリカのコートジボワール国について、概要をお伝えしたいと思う。
1.西アフリカの経済優等生だったコートジボワール
1)独立と経済成長
 コートジボワール共和国は、アフリカ大陸西部のギニア湾に面しガーナ共和国の西隣に位置している。 国土面積は日本よりやや小さく32万k㎡、人口2,032万人*1、 GDP309億㌦(2013年)*2の経済規模を有している。(出典: *1、*2の統計数値は世界銀行統計データ2013年)
 1960年8月、フランスより独立し、初代大統領フェリックス・ウフェ=ボワニのもと、開放政策が推進され、1960年代から1970年代にかけて「イボワールの奇跡」と呼ばれる年率平均8%の驚異的な経済成長を遂げた。
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2)モノ・カルチャー経済
 前述の「イボワールの奇跡」と言われる経済成長は、カカオ豆(チョコレートの原料)の生産及び輸出拡大を中心とする農業経済によって成し遂げられた。現在でも、経済の中心はカカオ豆で世界生産量の4割を占め、カカオの輸出は同国の全輸出額の45%を占めている。
 しかし、カカオ豆に過度に依存しているモノ・カルチャー経済は、商品市況に大きく影響を受けるというリスクが存在する。実際、1980年代に入るとカカオの世界需要が伸び悩み、カカオ市況は低迷した。これにより、同国経済は大きく落ち込み長期にわたる停滞を余儀なくされた。この経済低迷は、カカオ生産を拡大のために近隣国より流入させた移民と旧住民との対立をもたらし、政治闘争の先鋭化とともに混乱に拍車がかかり対立の溝を深める結果となった。
2.混乱と内戦
 1999年12月、クーデターが発生し軍事政権が樹立された。翌年の選挙では軍事政権に対する市民の抵抗で、ローラン・バグボ氏が第4代大統領に就任し、混乱の収拾が期待された。しかしながら、バグボ大統領は「イボワリテ」と呼ばれる旧住民を重視する政策をとり、流入移民の不満を招くこととなった。
 再び、軍の一部と不満を持つ市民層がブアケやアビジャンで蜂起し反政府側が国の北部と西部をおさえ、国を二分する状況になった。2010年12月の大統領選挙では、ワタラ氏(現大統領)が55%の得票で大統領に選出されるもバグボ前大統領が権力移譲を拒否した。この状況が、ワタラ陣営とバグボ陣営の武力衝突に発展しアビジャン市内でも銃撃戦が繰り広げられた。いまだに、アビジャン市内の幾つかの建物では銃弾跡が残っている。
3.復興を目指すコートジボワール
 2011年5月にバグボ前大統領が拘束されたことで混乱が収束し、復興に向けた動きが開始された。私が赴任している投資促進公社も2012年の後半に組織をたて直し、起業手続きを一カ所で済ませられる「ワンストップ・ショップ」の設立等、投資円滑化支援を通じた経済復興に取り組んでいる。各省庁も組織・人員を増強し、2012年より経済復興に向けた本格的な取り組みを開始した。
 2014年1月には、安倍首相がコートジボワールを訪問し、平和と安定、及び経済成長を共に実現し民間投資を促進するためのインフラ,産業・人材育成,投資促進等の協力を本格化することを表明した。
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               JICAオフィスよりアビジャン市内を望む
4.イボワール人の気質と組織風土
 さて、経済復興に取り組むコートジボワールの人々の気質と組織風土について簡単に述べておきたい。
コートジボワール人は概して生真面目で、決められたことをしっかり守りながら仕事を進めていく印象がある。また大言壮語な物言いはせず、実直な話し方の人間が多い。
 組織に関しても統制が十分取れていて、トップダウン型のマネジメントが徹底している。基本的には、組織のトップの意思決定がなければ物事を進めてはならない。新規案件は、些細な案件であってもトップマネジメントの判断を仰ぐ仕組みになっている。
 一例を出せば、省庁の役人や関係機関の人々と初めて会う場合は必ず組織のトップの了解が必要となる。私も、投資促進公社に赴任するに際して、公社の総裁に面会し了解を得なければならなかった。現地赴任日から1週間、先方のアポイントメントが取れず、オフィス訪問もままならなかった。また、担当者との打ち合わせは、些細な事柄であってもトップまで報告が入り、必要に応じ指示を受けているようだ。もし、依頼事項になかなか答えが出ないとしたら、相手方のトップマネジメントが不在で判断できない状況にある事が殆どである。
 日本のボトムアップ型の組織運営に慣れている者にとっては面喰うことだが、コートジボワールのビジネスを進めるうえでは、この辺の事情を十分理解しておく必要がある。
(最後に)
 経済復興に取り組むコートジボワールを数値面から捕捉しておく。2011年の同国のGDPは241億米ドルであったのに対し、2013年のGDPは309億米ドルにまで増加している。増加率にして28.2%であり、未曽有の経済成長となっている。これは混乱が収まり復興が本格化するとして、建設投資や諸外国からのビジネス投資が進んでいる背景がある。日本企業は、総合商社と味の素が現地進出しビジネスを開始している。ただし、本格的なビジネス構築はこれからの様である。
 コートジボワールは、西アフリカ市場3億人へのアクセスポイントとして有利な場所に立地し、人口面・経済成長の両面より市場成長が見込まれビジネスのポテンシャルは高い。今後、多くの外国企業が進出することが期待されているが、日本企業がその一翼を担うことを大いに期待している。
六角 一雄(ろっかく かずお)
1998年中小企業診断士登録、NPO法人金融検定協会認定 ターン・アラウンド・マネージャー
証券会社勤務後、開発コンサルタントとして独立、企業の海外進出支援及び途上国の経済開発に係るコンサルティングを行う
【著書】 新米コンサルタント奮闘中、新米コンサルタントは診断士(同友館:共著)