2023年6月に実施された帝国データバンクのアンケート結果※1によると、【業務で活用している】と回答した企業の割合は 9.1%であり、【業務での活用を検討】している企業は 52.0%と全体の半数を超えている。つまり、生成 AI を『活用・検討』している企業の割合は 61.1%と、6 割を超えている。ただし、【業務での活用を検討】している企業であっても、「活用を具体的に検討していく」とした企業は14.2%であり、「現時点では活用イメージが湧かない」とした企業が37.8%にもなる。これは、生成AIという最新技術を使いたい企業は多くあるが、どのように活用(どの業務に適用)したらよいかを検討することが難しいという結果を示していると考えられる。

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図1:生成AIの活用状況
出典:帝国データバンク「生成 AI の活用に関する企業アンケート」※1より抜粋

 そこで、本コラムでは、そもそも生成AIとは何なのかという点から、先行企業はどのような業務で生成AIを活用しているのか、また活用の際の注意点について考察したい。

■生成AI(Generative Artificial Intelligence)とは
 考察を始める前に、改めて生成AIについて確認する。生成AI(特に対話型生成AI)は、文部科学省「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」の中で、

ChatGPTやBing Chat、Bard等の対話型生成AIは、あたかも人間と自然に会話をしているかのような応答が可能であり、文章作成、翻訳等の素案作成、ブレインストーミングの壁打ち相手など、民間企業等では多岐に亘る活用が広まりつつある。 これらのAIは、あらかじめ膨大な量の情報から深層学習によって構築した大規模言語モデル(LLM(Large Language Models))に基づき、ある単語や文章の次に来る単語や文章を推測し、「統計的にそれらしい応答」を生成するものである。

と記載がある。画像2

図2:対話型生成AIの概要と課題
出典:文部科学省「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」※2より

 つまり、ユーザからの“問い”に対して、生成AIが“それらしい回答”を生成しているということであるので、生成AIを企業で活用しようと思えば、顧客サポート、商品推薦、マーケティング、内部コミュニケーション、教育など、企業内で“問い”と“回答”が対になるような業務であれば、様々な用途に活用が可能である。

■中小企業における生成AIの活用例
 それでは、生成AIを活用して改善できる業務にはどのようなものがあるでしょうか?ChatGPTに訪ねてみると、以下のような回答が得られました。
== 以下 ChatGPTの回答 ==
1. カスタマーエンゲージメントの向上: 生成AIを使用して、個別の顧客に合わせたパーソナライズされたコンテンツや提案を生成することができます。顧客の興味やニーズに合わせたコミュニケーションを行うことで、顧客満足度を向上させ、売上を増加させることができます。

2. 商品やサービスの開発支援: 生成AIを活用して、新しい商品やサービスのアイデアを生み出したり、既存の商品やサービスを改善するためのアイデアを提供することができます。顧客のフィードバックや市場のトレンドをもとに、より需要の高い商品やサービスを開発することができます。

3.マーケティングコンテンツの作成: 生成AIを使用して、ブログ記事やSNS投稿、広告などのマーケティングコンテンツを自動的に生成することができます。効果的なコンテンツを効率的に作成し、顧客の関心を引きつけることで、ブランドの認知度や売上を向上させることができます。

4. 生産性の向上: 生成AIを活用して、日常業務の自動化や効率化を図ることができます。例えば、自動でレポートやドキュメントを生成したり、繰り返しの作業を自動化したりすることで、従業員の生産性を向上させることができます。
== 以上 ChatGPTの回答 ==

 この回答を見ると、確かにすぐにでも業務活用できそうな気がします。では、実際に上記の様な使い方をしている企業は存在するのだろうか?
 東京商工会議所より発行されている、中小企業のための「生成AI」活用入門ガイド※3を確認すると、①業界課題解決や付加価値向上、新規市場開拓などの情報収集・アイデア出しに活用、②あいさつ文・お礼状の作成、文章の言い換え・類語の検索、英文の翻訳、ビジネス・事業アイデアの考案等で活用、③外注先への指示出しを行うにあたり、必要事項を箇条書きにして、正式な依頼文に、④ウェブ広告配信サービスのキーワード文の作成・組み合わせや、米国市場向けのSNS運用においてたたき台となる英文を作成などの実際の業務で活用している事例を閲覧することができるため、ぜひ参照されたい。

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図2:中小企業の活用事例(製造業(理化学機器)、従業員10人、大田区)
出典:東京商工会議所「DXレポート(簡易版)」※3より抜粋

■活用にあたっての注意点
 前述の通り、生成AIの活用に取り組んでいる企業が徐々に増えていく中、これから生成AIの活用を検討する企業は、メリットだけではなく活用時の注意点にも目を向ける必要がある。
 (一社)日本ディープラーニング協会より公開されている、「生成AIの利用ガイドライン」では以下の注意喚起がなされている。
(1) データ入力に際して注意すべき事項
  第三者が著作権を有しているデータ(他人が作成した文章等)
  登録商標・意匠(ロゴやデザイン)
  著名人の顔写真や氏名
  個人情報
  他社から秘密保持義務を課されて開示された秘密情報
  自組織の機密情報

(2) 生成物を利用するに際して注意すべき事項
  生成物の内容に虚偽が含まれている可能性がある
  生成物を利用する行為が誰かの既存の権利を侵害する可能性がある
  著作権侵害、商標権・意匠権侵害、虚偽の個人情報・名誉毀損等
  生成物について著作権が発生しない可能性がある
  生成物を商用利用できない可能性がある
  生成AIのポリシー上の制限に注意する

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図3:生成AIの利用ガイドライン
出典:(一社)日本ディープラーニング協会ホームページより抜粋※4

 ChatGPT等の生成AIサービスは上手く活用すれば非常に有効なツールであるので、上記のような注意事項に留意しながら、各社での業務適用を検討してほしい。

参考文献(引用元):
※1:生成 AI の活用に関する企業アンケート
https://www.tdb-di.com/2023/06/oq20230620.pdf
※2:初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン
https://www.mext.go.jp/content/20230718-mtx_syoto02-000031167_011.pdf
※3:中小企業のための「生成AI」活用入門ガイド
https://www.tokyo-cci.or.jp/chusho/tcci_generativeai_guide_for_smes_ver02.pdf
※4:生成AIの利用ガイドライン
https://www.jdla.org/document/#ai-guideline

【プロフィール】
笹原 聡(ささはら さとし)
経済産業大臣登録 中小企業診断士
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会 中央支部 執行委員・研修部副部長