Global wind (グローバル・ウインド)

中央支部国際部、ワールドビジネス研究会 向井実

 

私は、昨年中小企業診断士登録した、定年間近のシニアな新人診断士です。IT企業勤務35年間の経験とスキル、特に海外・国内営業で鍛えた押しの強さと引き際の良さ、をどこかで活かせないかと多くの研究会を見学させていただきました。その一つにワールドビジネス研究会があります。毎月1回、海外業務に関する知見、外国文化と歴史に関する知見、JETRO・JICA・中小機構等海外支援関連団体の講演等が行われています。

さて、当方の数少ない強みと、中小企業に求められる機会を考えると、貢献の分野は限られています。①日本の中小企業が海外で騙されないように、『転ばぬ先の杖』になること、②日本に進出する海外企業のビジネスマッチングや販路開拓の『水先案内人』になることです。そんな訳で、ワールドビジネス研究会にて「自由貿易研究分科会」を提案し、昨年夏にご承認いただきました。

本レポートは、この分科会活動の主軸となる駐日外国公館との、両国中小企業の貿易・投資・交流促進を目的とした面談の報告です。

自由貿易研究分科会のメンバーは、現在以下の3名です。

野村 昌明さん、藤田 泰宏さん、向井 実

①自由貿易研究分科会(TPP研究)の中間報告会、WBS月例会にて

①自由貿易研究分科会(TPP研究)の中間報告会、WBS月例会にて

 

1.TPP研究

まず最初の活動は、当時中小企業の国際化対応とインバウンド対応の両面で話題となっていたTPP(環太平洋パートナーシップ協定)の研究をテーマにしました。①藤田研究員は、長年の商社勤務スキルを活かし、TPP最新動向を英文ニュース等で分析し共通ルール論点、各国のセンシティビティー・リストを整理し理論面をリードしました。②野村研究員は、同じく自動車会社勤務スキルを活かし、日本の製品を如何に効率的にTPP加盟予定国に輸出するか、日本の中小企業の海外進出を如何に容易にするか、を調査し実務面をリードしました。③向井研究員は、IT企業現役営業の流れで、TPP交渉参加11ヶ国の駐日外国公館との面談設定とアジェンダ調整という渉外的役回りを担いました。

②中小企業にとってのTPP

②中小企業にとってのTPP

 

結果は、交渉中の政治的テーマとの理由で、GDP比率の高い米国、カナダ大使館との面談調整はできませんでした。しかし、既に経済連携協定(EPA)を締結済みで、大企業の進出が一段落し、今後中小企業の相互交流と経済促進に興味を示していたマレーシア、ペルー、メキシコとは有意義な情報交換・交流ができました。

③メキシコ大使館 インクラン・セルジオ公使と面談

③メキシコ大使館 インクラン・セルジオ公使と面談

④TPP交渉参加11ヶ国大使館面談状況

④TPP交渉参加11ヶ国大使館面談状況

2.日欧EPA分科会

2017年1月、米国トランプ新大統領のTPP離脱宣言により、残念ながらTPP条約発効の加盟12ヶ国総計GDPの85%以上の国内法上の手続きが不可能になりました。しかし、TPP11推進議論や同条件の経済連携協定/自由貿易協定(EPA/FTA)への適用等、その高度な自由貿易の内容と交渉と成果は生き続けています。

とは言え、TPPでの大使館面談は難しくなりましたので、研究分科会のテーマを見直して、脚光を浴び始めている欧州とのEPA交渉にシフトしました。TPPと同じように「三回断られてからが勝負」(ニトリ会長)とアプローチしましたが、実は日欧EPA交渉は、欧州連合条約に基づき欧州連合(EU)の駐日欧州連合代表部が行っており、欧州各国の駐日大使館に日欧EPAについてインタビューを申し込むのは無理があることが分かりました。若干抽象度を上げて、「両国中小企業の交流促進を通じて、相互の経済発展に資する目的」での面談依頼を進めています。

特に、各国大使館だけでなく、日欧EPAに対して「自由貿易に関する200の提言」を行っている欧州ビジネス協会(EBC、欧州18カ国からなる欧州商工会議所及び駐日経済団体の貿易政策を司る機関)との面談は、政策面で大変有意義な交流となりました。

EBCとTokyo-SMECAとの面談記事(https://www.ebc-jp.com/)

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⑤欧州ビジネス協会(EBC)ダニー・リスバーク会長と面談

⑥スペイン大使館 経済商務部 マリア・デル・コリセオ・ゴンサレス・イスキエルド参事官と面談

⑥スペイン大使館 経済商務部
マリア・デル・コリセオ・ゴンサレス・イスキエルド参事官と面談

⑦日欧EPA大使館面談状況

⑦日欧EPA大使館面談状況

3.EPA/FTA分科会
現在、研究分科会2年目となり、名称を「EPA/FTA分科会」として、ワールドビジネス研究会にて分科会メンバー募集中です。大使館訪問は平日昼間となりますが、自由貿易の理論的研究、政策や協定交渉内容のアップデートと休日作業もあります。2020年東京オリンピックに向けた①インバウンド対応と、②中小企業国際化支援に向けての知見獲得とネットワーク構築が期待できる活動です。
日本のEPA/FTAは道半ばにあります。各国も、大企業から中小企業の相互国際化促進に政策領域を広げようとしています。国際派中小企業診断士への志、道半ばの私も、英語でのコミュニケーションと会議・討論でのリーダーシップを研くために、ビジネス英語研究会、トーストマスターズにも所属して日々研鑽しております。

⑧EPA/FTA道半ば

⑧EPA/FTA道半ば

以上

■ 向井 実(むかい みのる)
大学卒業後NECにて35年間、国内・海外顧客向けのITサービス提案・営業に従事。
海外販路開拓では、台湾と中国に長期出張。海外子会社経営では、米国とシンガポールに現地駐在。
2016年診断士登録、自称「シニアな、ひよっこ診断士」として東京都中小企業診断士協会、企業内診断士会(10社会)に所属する企業内診断士。主な参加団体は、中央支部国際部、ワールドビジネス研究会、ビジネス英語研究会、NEC診断士会(気仙沼バル実行委員)、トーストマスターズクラブ(田園都市、三田)。