Global Wind (グローバル・ウインド)
「ベトナムから世界に羽ばたけ!若者にリアルな海外ビジネス体験を」

中央支部・国際部 三宅 秀晃

 日本企業のグローバル化が進み、私が住んでいるベトナムにもコストダウンを目的とした進出だけではなく、市場の成長を取り込もうという日本企業の進出が増えています。今後の日本経済を担う若者が将来世界中で活躍することはもはや必須の時代なのですが、しかし、海外志向の大学生は減っているという話もあります。
 ベトナムから世界で活躍する人を増やしたい、という想いでたくさんの海外インターン生に接し、感じていることを紹介します。

image1_【新興国ベトナムで挑戦する大学生】

【新興国ベトナムで挑戦する大学生】

・「日本」ブランドはこれからも世界最高であって欲しい
 日本は世界最高の先進国です。私もベトナムに住むまではそれを信じて疑いませんでしたし、今もベトナムの街を歩いていると「日本」ブランドの強さを感じます。街で走っているタクシーはまだまだトヨタが多く、ベトナム人はバイクのことを「ホンダ」と呼んでいます。ただ、これは諸先輩方の残してくださった功績であり、これからの「日本」の評判はどうなっていくのかと少々の不安を抱えています。
 というのも、1945年時点、世界で人口5位の大国だった日本はその後、高度成長を遂げて世界一の経済国家になりました、というのは今の大学生も教科書で習う事実。しかし、日本の人口は減少が始まり、2100年には5000万人前後になるという予測も出ています。2050年のGDP予測によると「先進国」の顔ぶれが今とは大きく変わってくるという話もあります。1985年の映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」ではアメリカ人からの「日本製品」に対する評価が25年で「安かろう悪かろう」から「最高」に変わった様子が描かれていますが、いま「安かろう悪かろう」と呼んでいるものもそうなりつつあります。そんな中で「日本」のブランドが今後どうなっていくのか、諸先輩方が築き上げたこのブランドを我々の世代でより高めて、100年後も世界に名だたる国「日本」であって欲しいと、一日本人として願うのです。そのためには世界で「日本代表」として活躍する日本人が増えることが必要ではないかと思っています。

・挑戦体験が自分を変える
 大学生や若手社会人と話していると、海外に興味がある人も一定数いることに気づきます。しかし、興味があっても「わからない」から怖くなり、「自信がない」から飛び出さないという意見もありました。失敗を恐れる風潮も相まって、海外で挑戦しない方が増えているように感じます。
 1960年、ソニー(当時は東京通信工業)がニューヨークに進出した時の話を初めて読んだときに、今の大学生に必要な経験はこれではないか、と感じました。当時は日本製品が「安かろう悪かろう」と言われていた時代。そのストーリーによれば、米国に渡ってからカルチャーショックを受け、様々な失敗があったが、それでも諦めずに続けた結果「世界のソニー」になったという話でした。
 そのストーリーを読んで私が驚いたのは、今であれば海外文化研修や駐在員研修等で教えられているような内容も知らないままに渡米していたということでした。当時はそのような情報が本当になかったのだとも思いますが、失敗を恐れずに、果敢に新しい市場に挑戦して、諦めずに続けた結果に成功があったというストーリーは、まさに今の若者に必要な経験ではないかと思っています。とはいえ、今の時代に未経験の若者が駐在員として市場開拓をする機会を得ることは、なかなかに難しいものではないでしょうか。

・挑戦の場としての海外インターンシップ
 そのような挑戦の場の一つとして増えているのが海外インターンシップです。ベトナムでも1ヶ月~半年ほどのインターンシップ生を見かけることが増えてきています。通常の業務への従事はもちろんのこと、タイミングが合えば、新規事業立ち上げを任されるなど、素晴らしい経験の場となっていると感じます。

image2_【新規事業立ち上げのため自転車でベトナムを走る】

【新規事業立ち上げのため自転車でベトナムを走る】

 弊社では「ミッション実践型インターンシップ」という1週間のプログラムを大学生向けに提供して、1週間という短い期間で数多くの失敗と小さな成功体験を積み重ねられる環境を作っています。日本の常識が通用しないベトナムで行う「海外ビジネス」なので、失敗して当たり前。実際に海外でビジネスを始めると直面するであろう「壁」を段階を追って作っておき、毎日こちらから出題する「ミッション」に思う存分挑戦してもらいます。毎日の活動後にはビジネス講義を行い、学生が各々内省を行うことで経験を伴った学びとして定着するようにしています。

 海外インターンシップにはスタディツアーやボランティア、ビジネスコンテストなどのプログラム形式もあれば、通常業務に従事するものなど目的やプログラム内容も様々あるようですが、大学生のうちから異国の地での挑戦を通じてマインドとスキルを身につけ、世界で活躍できるようになっていくのはとても頼もしいことだと思っています。

・ベトナムがそのような挑戦に最適な国である
 このような挑戦にベトナムは最適な場所だと考えています。その理由は、
 ・日本とは全く異なる環境でありながらも親日国であり活動しやすい
 ・英語圏ではないので、英語が苦手な方も思う存分挑戦できる
 ・治安がよく、しっかりと注意していれば女性の一人歩きも問題ない
 ・今注目の新興国であり、アジアの経済成長を体感できる
というところ。もちろん在住邦人が1万人を超えていて医療などのインフラも問題ありません。なにより、治安が良くて人々も穏やかなので、もちろん万が一の際の対策を行った上で安心して、不慣れな学生を街で活動させることができると感じています。

image3_【日本とは大きく違う環境のホーチミン市の下町】

【日本とは大きく違う環境のホーチミン市の下町】

・インターンシップの効果
 「ミッション実践型インターンシップ」では、初日に1週間で取り組む課題を提示するのですが、その時の感想は「こんなの絶対できない」といったようなものがほとんど。しかし、最終日になるとどのチームも課題の最低条件を楽々クリアして、「よりベトナム人にウケるにはどうしたらいいのか」という独自の視点も沢山盛り込んだものを成果として生み出すのです。最初は「海外は怖い」「自信がない」と話している学生も、終わるころには「一刻も早く海外で働きたい」と話すようになるなど、マインドと能力の両面が大きく変化していることを感じます。その後に、長期の海外インターンシップに参加するなど、新しい挑戦を始めるきっかけとなることもあるようで、将来世界中で活躍してくれるのではないかと頼もしく感じています。

image4_【世界に羽ばたいていくであろう学生たちと。右下が筆者。】

【世界に羽ばたいていくであろう学生たちと。右下が筆者。】

 ベトナムでインターンシップをサポートした方の中からは既に就職した方も出てきました。今はベトナムで5年事業を行っている経験や、過去に就活サポートを行っていた経験から、彼らの就活やキャリアに先輩という立場でアドバイスを行っています。これが10年後には「日本代表」の仲間として一緒にビジネスをしていけることを願って、これからもベトナムから世界に羽ばたく若者を輩出していきたい、そう思っています。

■三宅 秀晃(みやけ ひであき)
Spice Up Vietnam Co., Ltd.代表。ベトナム・ホーチミン市を拠点にグローバル人材育成事業及びメディア事業を手がける。人材育成事業では大学や日本企業と提携してプログラムの現地運営を行うとともに1週間プログラム『グロキャン!』を企画・運営し、過去2年半で300人超の海外体験をサポート。メディア事業では、ベトナムを日本に紹介するウェブメディア運営、現地フリーペーパー発行の他に旅行ガイドブックの執筆や取材コーディネイトを行う。ベトナム在住6年目。
ベトナム生活・観光情報ナビ:https://vietnam-navi.info/
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