遠藤 孔仁

 アベノミクスの成長戦略の第3の矢である、新たな成長戦略の「中小企業・小規模事業者の革新」を支えるキーファクターとして、クラウドソーシングが2014年度版の中小企業白書にも紹介されています。このコラムでは、ITを活用した資源活用策として、クラウドソーシングの紹介、活用するメリットについて説明いたします。
 クラウドソーシングとは、インターネット上の不特定多数の人々に仕事を発注することにより、自社で不足する経営資源を補うことができる人材調達の仕組みのことです。
 具体的には、通常発注する側と受注する側が直接交渉し、仕事の内容や金額を決めて取引をしていましたが、クラウドソーシングの場合は、その間にサイトを運営する、仕事の仲介業者が存在する仕組みとなります。そのことにより、仕事を受ける側が不特定多数の個人が仕事を請け負うことを可能としました。
20141001_01.png
       図1 クラウドソーシングにおける外部発注の流れ(出典:2014年度中小企業白書)
 また、中小企業・小規模事業者がクラウドソーシングを活用することで、次のようなことが実現できます。
①不足している経営資源、特に不足している人材を確保することができます。また、専門的な業務を外部に任せることにより、より効率的に仕事を進めることができます。
②起業時やスモールビジネスに適しているといわれおり、時間や場所の制約から解放された仕事を実現することにより、新しい働き方を実現でき、また、地方に住む人や専業主婦などのスキルを活用することができます。
クラウドソーシングの市場規模
 国内のクラウドソーシング市場規模推移と今後の市場規模予測として、2013年度の国内市場規模見込みは246億円であるが、これが4年後の2017年度には、約6倍の1,474億円になると予測されており、国内のクラウドソーシング市場が急成長すると見込まれている。
20141001_02.png
      図2 国内クラウドソーシング市場規模推移と予測(出典:2014年度中小企業白書)
クラウドソーシングの類型
 クラウドソーシングを、受注者の決定方法や仕事の進め方などから分類すると、「プロジェクト型」、「コンペティション型」、「マイクロタスク型」の三つに分類することができる(図2)。
20141001_03.png
         図3 クラウドソーシングの類型(出典:2014年度中小企業白書)
 プロジェクト型は、ウェブ開発、ホームページ制作などを前提として、期間と成果物が決まっている。マイクロタスク型は、仕事単位が数秒から数分で完結する誰でもできるような非常に簡単な作業による成果物を提出する仕事を対象としています。
 具体的な仕事の内容として、図4にその内容を記載しました。現状においては、ウェブ開発やデザイン関係などの仕事が多く、専門業者以外の個人でも比較的受注しやすい内容となっている。
20141001_04.png
         図4 クラウドソーシングの仕事の例(出典:2014年度中小企業白書)
クラウドソーシングの課題と今後の可能性
 クラウドソーシングを利用する上での課題として、発注者の立場からは、「仕事の質が不安定」、「受注者との意思疎通が難しい」とする声が多く、一方、受注者がクラウドソーシングを利用する際に感じるメリットとして、「仕事の受注のしやすさ」、「専門スキルを活かした仕事の獲得」、「売上の増加」、「空いた時間の有効活用」等、個人やクラウドソーシングを積極的に事業に組み込んでいこうとする傾向が見られる。
 また、サイト運営する仲介業者にも、「質の高い受注者の確保」や「継続的に発注がある発注者の確保」を求める声があります。
 クラウドソーシングは、注目され始めた仕組みであり、解決すべき課題もあるが、その特徴を十分に踏まえた上で活用することで、今後クラウドソーシングが、中小企業・小規模事業者の経営課題解決の一つのツールとなることが期待される。
参考 2014年版中小企業白書
■遠藤孔仁(えんどうこうじ)
東京都中小企業診断士協会 中央支部 青年部 部長