長 克成

 最近、お客様から「合同会社って何?」「合同会社って聞いたことがあるけど、その特徴がよくわからない。」というお話を多くいただきます。
思った以上に使い勝手のよい合同会社。今回は合同会社について基本的な特徴を、主に株式会社との比較からまとめています。
会社を設立する際、合同会社を選択肢の1つとして検討してみてはいかがでしょうか。

1.データでみる合同会社
〇会社形態別 設立登記件数
以下のデータは法務省 登記統計に記載のある会社形態別設立登記件数です。
図1

図2

データから次のようなことがわかります。
■ 合同会社の設立件数は右肩上がり
■ 特にここ3~4年で急増
■ 平成27年では、設立される会社の約20%は合同会社
年間に設立される会社のおよそ5社に1社は合同会社です。もはや決してマイナーな会社ではありません。
合同会社が増えているのには理由があります。それは、「手軽さ(安い・速い・簡単)」です。

2.株式会社と合同会社で共通すること
まずは合同会社と、一般的な会社としてイメージしやすい株式会社の共通する点を押さえておきましょう。合同会社と株式会社で共通する点は以下のとおりです。
■ 出資を限度とする間接有限責任の会社(法人)である
■ 税務は法人税の制度が適用される
■ 会計は純資産の部で若干の相違はあるもののほぼ同じ
■ 資本金1円、出資者は1人からでも設立可能
■ 役員(取締役又は業務執行社員)も最小1名でOK
出資者の責任、税務・会計面、設立・運営の最小単位は株式会社とほぼ同じです。

3.合同会社の最大の特徴「所有と経営の一致」
では、合同会社と株式会社で異なる点はどのような点でしょうか。
それは株式会社が「所有と経営が分離」しているのに対し、合同会社が「所有と経営が一致」している点にあります。具体的には次のとおりです。

〇合同会社=「所有と経営の一致」
■ 会社に出資した者を「社員」という
■ 社員が業務執行権を有し、会社の経営を行う
■ お金を出した人自身が会社を経営するので、会社法上、内部自治が広く認められ、手続や組織形態等が簡略
■ 業務執行は社員の過半数の一致で決定、重要事項は社員全員の一致で決定(出資額に関係なく1人1票)

〇株式会社=「所有と経営の分離」
■ 会社に出資した者を「株主」という
■ 株主が選んだ取締役が業務執行権を有し、会社の経営を行う
■ お金の出し手と、会社の経営者が異なるので、会社法上、株主保護のための規定が多く、手続、組織形態等が厳格に規定されている
■ 業務執行は取締役会決議又は取締役の過半数の一致で決定、重要事項は株主総会決議にて決定(出資額に応じて1株1票)

4.合同会社は「設立」が安い!早い!簡単!
合同会社と株式会社の設立時にかかる費用の比較及び設立工程の比較は以下の図のとおりです。
合同会社は、会社設立時に公証役場での定款認証手続きが不要であり、また、設立登記の登録免許税額が少額で済みますので、株式会社より約14万円程度安く設立可能です。また、合同会社は手続工程が少なく、各工程の内容も簡易なものとなります。

図3

図4

5.合同会社は「会社運営」が安い!速い!簡単!
所有と経営が一致している合同会社は、株式会社に比べて会社法上、内部自治が広く認められ、手続や組織形態等が簡略であり、維持費が安く、機動的な運営ができます。
以下がその例です。
■ 決算公告の義務がないから公告費用(毎年7万3千円程度:官報の場合)が不要
■ 役員に任期がないから、定期的な役員再任手続・登記が不要
■ 株主総会、取締役会等の機関がないため、招集や法定の手続が不要で、意思決定は社員の一致で行うため、簡易・迅速な意思決定が可能
■ 合同会社内部のことは、原則として社員で自由に取り決めができ、定款で定めることにより、かなり自由な会社運営が可能

6.合同会社のデメリット
合同会社のメリットを見てきましたが、株式会社と比較した場合、合同会社のデメリットとなりうる要素もあります。以下にいくつか挙げます。
■ 認知度が株式会社に比べてまだ低い
■ 社員(出資者)が多いと意思決定・運営が難しくなる
■ 第三者から出資という形での資金調達が難しい
■ 専門家の合同会社の取扱い経験の少なさの問題(特に設立以外の運営に関して)

7.まとめ
合同会社は、もはやマイナーな会社形態ではありませんし、株式会社とは異なる様々な特徴があります。メリットとデメリットを考慮した上で、自社の事業の目的にあった種類の会社を選択しましょう。

略歴
長 克成(ちょう かつしげ)
中小企業診断士・司法書士
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会 中央支部 執行委員/青年部 副部長